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    September 17

    官能小説”ふたつの仮面を持つ女” 6話

    5話より、続く

     

    男の行為に酔いしれるわたし――。どうなってしまったのだろう? わたしの身体・・・・・・こんなことをして、良かったのか――。でも、拒めない。男の行為に身を委ね、溺れていくわたし・・・・・・落ちる所まで堕ちて行くのか――。

    「気持ちよく……もっと・・・もっと・・・」

    男の声が耳に響く。

    「あー」

    声にならない。

    「いい子だ……リカ」

    「……身体が……熱いの……」

    必死で自分を保とうとしても、もう無理。

    「そうかい? 気持ちよく感じていなさい」

    「……はい」

    とろりとした眼差しを男に向ける。男の微笑んだ顔が見えた。

    「燃えているよ」

    「……うん」

    もう、頷く以外返答もできない。

    「リカのオ○○○は・・・激しく熱い・・・俺の指が・・・火傷しそうだ」

    「……」

    言葉さえ出ない。男の指の動きに身体が囚われている。

    「素敵だよ・・・もっと・・・もっと・・・欲しいよ、リカ」

    男の欲望は、とどまる事を知らない。

    「……あー、もうどうしたらいいの?」

    耐え切れずに思わず口にした言葉――。

    「キスしよう」

    「えっ!」

    男の言葉に驚いた。

    「こっちを向いて!」

    「…・・・こう?」

    「そうだ。そのままでいい!」

    「はい」

    「リカ・・・好きだよ・・・チュ!」

    「あー」

    「もっと、こっちにおいで!」

    「はい」

    「お前を抱き締めていたい。リカ」

    「はい・・・ご主人様」

    「いい子だ。指は・・・リカのアソコに入れておく」

    「はい」

    「俺の身体で、お前の身体を全部包んでおきたい」

    「あー」

    「少し痛くても、我慢しろ!」

    「はい」

    「お前の身体が欲しいんだ!」

    「……」

    「小さくて。可愛い身体だ・・・好きだよ。リカ」

    「……」

    「リカ・・・」

    ――チュ!――

    男が、おでこにキスをする。

    「いい子だ・・・まだ、カラダが疼いているね」

    「……」

    男には何もかも御見通し、隠し事なんか出来ない。

    「いい子だから、このままこの疼きを残しておきなさい」

    「?」

    男の言葉の意味が咄嗟に判断できなかった。

    「いいね」 

    「はい」

    男に言われたことには、反論できない。

    「そして、この疼きを――今夜、彼に届けなさい!」

    「えっ!」

    男の言葉に再び驚いた。

    「そして、気持ちよく最後まで行くんだよ。いいね」

    「ええ、でも――」

    男は、知っていた。セックスレスが解消されつつある事を――。

    「いいんだよ。俺は――」

    「あー」

    男の優しさに涙が出そうになった。

    「もう、自分でも気付いているんだろう?」

    「……」

    言葉にならない。

    「いいんだよ。それで――」

    「・・・うん」

    小さく頷いた。

    「でも、お願いがある」

    男の顔が真顔になった。

    「なに?」

    「今夜、もしも彼に抱いてもらえたなら・・・少しでいいから・・・彼のムスコを握ってくれないか?」

    「えっ!」

    男の言葉に三度驚く。

    「気持ちのいいときに・・・・・・握って欲しい」

    男が真剣だと、言う事がわかる。

    「……はい。わかりました」

    素直に従う。

    「無理は、言わないよ。リカが気持ち良くなって来たらでいいのだから――」

    男の眼差しがやさしくなった。

    「はい。握るだけなら、たぶん大丈夫です」

    男の気持ちに答えたい・・・その想いが胸に溢れる。

    「その時に、俺のも思い浮かべて、握って欲しい」

    男の切望を感じた。

    「はい」

    男の言葉に頷く。

    「よし! いい子だ」

    男が嬉しそうな顔をする。

    「……」

    もう、言葉も出なかった。

    「今日は、最高の1日だったよ。リカのお陰だ」

    男が笑みを浮かべて、礼を言う。

    「いいえ……」

    思わず、俯いた。こんなこと――今でも信じられない。

    「リカ……」

    「はい……ご主人様」

    「気持ち良かったかい?」

    「はい・・・とっても・・・」

    男の行為は、素直に気持ち良いと感じた。

    「俺のは、リカの事を思って、ビンビンだよ。先から、嬉し涙を流している。ははは」

    「えっ!」

    「見せてあげたいくらいだ」

    「……」

    一瞬、躊躇いが――。

    「いいんだよ。これから、ひとりで出す事にする」

    「えっ!」

    男には、何もかも見透かされていた。今はまだ、この男のすべてを受け入れられない。

    「いいんだよ。それで――」

    「……ごめんなさい」

    謝らずにはいられない。男は、挿入しなかったのだから――しようと思えば、できたのに――。

    「謝らなくていいよ。ただ、リカ・・・お前の事を思い浮かべていいか?」

    「はい」

    「俺だけのオナペットだね。お前の姿を焼き付けておくよ」

    「……はい」

    その事は許せる。

    「リカ・・・リカ・・・」

    「なーに?」

    「おれは、さっきの続きをするから・・・感じていてくれるね」

    「はい」

    「俺の気持ちを届けるよ。力いっぱい扱いて・・・お前の・・・リカの為にだけ・・・俺のを届けるよ」

    「はい」

    「お前の姿を想い浮かべ・・・後ろから・・・差し込んで・・・奥深くに・・・流し込むよ・・・リカ・・・いいかい?」

    「はい」

    「受け取ってくれるんだね」

    「はい」

    「じゃあ、後で、お前に届けるよ」

    「はい」

    男の言葉にただ頷くだけ――。

    「さあ、お母さんに戻って、家に帰りなさい。リカ・・・」

    「えっ!」

    「さあ・・・」

    「はい」

    男の言葉に、身支度を整えようと立ち上がる。

    「リカ・・・」

    「なーに?」

    「離れたくない・・・」

    「えっ!」

    「好きだよ! チュ!」

    「……」

    「さあ、行きなさい!」

    「はい」

    「また、逢おうね」

    「はい」

    「お前は、本当に綺麗だ・・・」

    「えっ! 本当?」

    「ああ、とっても綺麗だよ。最高だ!」

    「・・・ありがとう・・・でも、凄く恥ずかしい」

    「とんでもない! 自慢できるからだだよ」

    「そう?」

    「彼がきっと悦ぶよ。充分わかる。最高だ!」

    「……」

    「見た目だけじゃなく、感度もいいからね」

    「そう? わからない」

    「最高のオンナだ!」

    「・・・・・・嬉しい……」

    男の言葉が心底嬉しかった。

    「自分じゃわからないだろうね。それは――男が決める。いや、俺が決める」

    「……えっ!」

    「リカ・・・お前は綺麗で美味しいオンナだ!」

    「ありがとう・・・」

    「本当に・・・今日は、最高の1日だったよ」

    「…・・・うん」

    「リカ・・・また、時間を作ってくれるね?」

    「はい、ご主人様」

    「早く、逢いたいから・・・頼んだよ」

    「はい」

    「では、家族の元に戻りなさい!」

    「はい!」

    「さあ! 早く!」

    男の言葉に押され、私は急いで服を着て、男の部屋から出た。

    あの男が、一線を超えなかったのだ。何故――。

    でも、これからのことを思うと、怖い・・・・・・だって、この男に求められたら、今度こそ拒めない――

     

    ――――つづく

    September 16

    官能小説”ふたつの仮面を持つ女” 5話

     

    第4話の続き――

     

    男の熱い息がかかる。

    ――びくん――

    もう、おかしくなりそう……

     

     「お前の身体を開いて・・・俺の舌は滑り込んでゆく事にする。もう、こんなに蒸れて、濡れている・・・リカのあそこ・・・」

    「あー、見ないで・・・・・・」

    男の言葉で恥ずかしくなる。でも、言葉とは裏腹に、見て欲しいという欲望も渦巻いていた。

    「見ているよ。じっと――ね」

    「ああ、恥ずかしい・・・」

    思わず、顔を覆う。隠す所が間違っているかもしれないが、男に見られている事が、妙な興奮を呼んだ。

    「色や、形も・・・・・・綺麗だよ・・・本当に綺麗だ」

    言葉を発する度に男の熱い息がかかる。

    「そんなに・・・じっくり見ないで・・・」

    恥ずかしさが身体に伝わる。

    「素敵だよ。子どもがいるなんて思えない・・・」

    男の目がずっと注がれているのがわかる。それだけで、身体が反応する。

    「ああああ、我慢できない」

    「えっ!」

    「舌で掬うように舐めてやる・・・こうやって・・・音を立てて・・・」

    ――ズルズル・・・ズルズル・・・――

    (ああー、そんなところを――どうして・・・)

    「美味しいよ」

    (ああ、身体が熱い・・・)

    「リカ・・・舌で、襞を広げるよ・・・こうして・・・左右に広げて・・・」

    「ああ、駄目・・・・・・」

    「間に・・・舌を・・・差し入れようね」

    「あー」

    「舐めて上げてやる! こうやって・・・」

    男の舌が絶妙な動きをする。

    「うっ!」

    ――ペロペロ・・・ペロペロ・・・――

    「あー」

    「襞を口の中に・・・入れてしまうよ・・・こうやって・・・俺の舌で挟んで・・・引っ張ってやろう」

    「もう、 駄目! おかしくなっちゃう」

    男の行為に身体が自然と反応する。そんな事――いけない・・・・・・

    「・・・もう一度、舐めるよ・・・もっと、もっと・・・舐めるから・・・リカ・・・蜜を・・・蜜を・・・」

    「あー」

    「感じてくれているんだね。嬉しいよ・・・今度は、音を立てて舐めようね」

    「そんな・・・」

    「舐めるよ・・・舐めるよ・・・リカ」

    「……あー」

    男の言葉に蜜が溢れ出るのがわかる。こんなにも自分が淫乱だったのか――。

    「リカの・・・リカの・・・濡れたオ○○○を・・・舐めるよ・・・舐めるよ・・・」

    「・・・あー」

    「美味しい・・・美味しいよ」

    「……」

    「……指を入れようね」

    「あっ! 嫌!」

    思わず、身体を捩る。でも――

    「う~ん・・・・・・すんなり、入ってゆくよ」

    「あああああ……」

    男の指が蠢く。

    「柔らかいよ・・・中指を・・・まず1本だけ入れようね・・・先だけ・・・こうやって入れて・・・上に・・・下に・・・」

    「ああ・・・」

    「リカ・・・溢れてきたよ・・・ほら・・・蜜が・・・たっぷり・・・」

    「ああ・・・気持ちが・・・いいの」

    「そうだね・・・それじゃあ・・・リカの蜜を・・・指につけて・・・リカの・・・感じる・・・此処・・・塗ってしまうよ?」

    「あー、駄目!」

    「えっ!・・・どこだ?・・・どこのことを言っているんだ?」

    「……」

    男の言葉に、何も言えなかった。

    「言ってごらん?」

    男は執拗に食い下がる。

    「……それは……」

    「何処に塗るの?  ・・・・・・さあ、言いなさい!」

    「……意地悪……」

    「駄目だ! さあ、言うんだ! リカの何処だ!」

    「……クリちゃん」

    「そうだね。お利巧だ」

    「……」

    「では、ご褒美をあげよう・・・クリに塗りつけて・・・俺が・・・そこを・・・舐める・・・」

    ――ペロペロ・・・ペロペロ・・・――

    「あ、あ、あ」

    「ほうら・・・クリが大きくなった・・・感じているんだね」

    「ああ・・・恥かしい・・・」

    「舐め舐め・・・舐め舐め・・・」

    ――チュチュ・・・――

    「舌の先で・・・突いてやるよ・・・こうやって・・・」

    ――ツンツン――

    「あー、もう駄目!」

    「口の中に吸い込んでやろうか?」

    「・・・・・・」

    ――チュウチュウ・・・――

    「舌で廻してやる!」

    「あー」

    「気持ちいいだろう?」

    「……うん」

    「もっと・・・もっと・・・舐めながら・・・指を中に差し込んでいくよ」

    「そんな・・・・・・」

    「・・・掬うように・・・奥から・・・指を…手前に引いてくる・・・」

    「あー・・・おかしくなっちゃう」

    「リカのオ○○○の天井を・・・俺の指で・・・す~~~~と・・・撫でるよ」

    「あああああ」

    「熱いよ・・・中が熱いよ」

    「・・・リカも……」

    「クリも、もっと舐めようね」

    ――ナメナメ・・・チュチュ・・・――

    「ああ……」

    「指も早く動かそうね」

    ――グリグリ、グリグリ――

    「ああ、ジンジンして、我慢出来ない」

    「リカの身体が熱くなってきているよ」

    「うん」

    「クリがぐんぐん感じてきている」

    「うん」

    「いいよ。カラダの中が疼いているね・・・素敵だよ・・・綺麗だよ・・・リカ・・・リカ・・・」

    「頭もくらくらする」

    「じゃあ、もっと、もっと、指を回すよ」

    「ひー」

    「舌も廻すよ」

    「あー」

    ――グリグリ、グリグリ・・・ナメナメ・・・チュチュ・・・ナメナメ・・・チュチュ――

    「もう、許して~」

    「美味しいよ・・・リカ・・・リカ・・・素敵だよ」

    「……」

    「本当に素敵だよ」

    「ああ・・・」

    「悶えるオンナの美しさだよ・・・リカ・・・リカ・・・」

    「……」

    「もっと・・・もっと・・・昇っておいで・・・」

    「……」

    もう、言葉が出なかった。わたしは、どうなるの?

     

    ―――――続く

    August 26

    官能小説”ふたつの仮面を持つ女” 4話

     

    第3話より続き

       

    ――トゥルルルル――

    その時、電話が鳴った。

    「ちょっと、待っていて――」

    男は受話器を持って、移動した。ひとり取り残され、知らず知らずのうちに――。

    (そんな事・・・駄目なのに――)

    手がそっと伸びていた。自然と――

    (柔らかい・・・)

    触れた胸の柔らかさに驚いた。軽く揉む。その柔らかさに浸った。自分の胸の・・・・・・

    (あー、気持ちいい)

    そう――最近では、胸さえ触られたことがない。私は、今――主人とセックスレスだった。下の子を産んだ後――もう、6年になる。別に主人が嫌いになったわけじゃ無い。初めは、そう――あの夜、そっと触れられた時、生まれて3ヶ月の息子の傍に寝ていた娘が、寝返りを打ったことから始まった。主人から離れて、そっとあやす。もう、そんな気に慣れない。元々、主人のセックスに快楽なんかなかった。子どもを作ることしか考えていなかった。それに、主人はさっさと挿入して、射精して終わる。キスだけにこんなにも時間をかけられたことなんかなかった――。あの男の行為を身体中で感じている。こんなこと、初めて。身体が熱い――。

     手は、優しく胸を揉み続けていた。男に刺激され、柔らかい胸の弾力と対照的に乳首は硬く、尖っていた。乳首を軽く摘んで、こりこり。

    (あー・・・・・・)

     

    最初からそんなつもりはなかった。ただ、このオンナには素質があるように見えた。 そう――女の中に独特の香りを放っていた。 自分でも気がついていない――喉の渇きをこのオンナは、その香りから発していた。もちろん、他の男達は気がついていない。たぶん――。 俺も乾いているからこそ、気付いたのだろう。 だから、そのオンナにもごく自然に近づくことが出来、話すことが出来た。それは……お互いに求めているものが同じなのだから、当然と言えば当然なのである。 しかし、このオンナは自分の求めているものに気付いていないから、始末が悪い――いや、そうではない。そこが可愛いところだとも言える。少しずつ気付かせ、自分でも信じられない部分の発見と成長を知らせてやりたい。 確かに――俺もこのオンナの熟したところ見てみたい。そして――。

    そこで、チョットした計略のもと、オンナを俺の仕事部屋に誘い込むことに成功した。オンナの動揺は隠せなかったが、それ以上に――俺に、俺の生活にも興味を持ったようだ。このオンナには、戸惑いとその時間を与えてはいけないと思い、 後ろから肩を掴んで――ハッキリ、突き刺さるように言った。
    「君は素直じゃないね。自分では、気付いていないんだね。君の中のもうひとりの存在に――」

    それからは、俺の意のままだった。オンナは思ったより、素直に俺の言う事を聞く。それに、想像以上にいいオンナだった。俺好みの――。キスしただけで、あんな反応を示す。さあ、このオンナをこれから、どう料理しようか――客からの電話の応対をしながら、俺の頭の中ではその事ばかり考えていた。俺自身が我慢できないといきり立つ。そろそろ、戻るか――。

     

    「待たせたね」

    男の声がした。驚いて振り返る。慌てて、手を引っ込めた。

    「ああ、自分で揉んでいたね、いいんだよ」

    男が笑みを零す。

    「……」

    言葉が出なかった。自分がしていた行為を見られ、恥ずかしかった。すぐ、俯いた。赤面しているのがわかる。でも、熱くなった身体を持て余していたのも事実だった。

    「我慢できなかったんだね。いいことだ。じゃあ、反対側の乳房を俺がいたぶることにしようね。リカはこちらを揉んでいなさい」

    男は、私の心を見透かすように命令してきた。

    「……はい」

    もう、素直に従うしかない。

    「乳首を唇に強く吸い込んで、口の中でリカの乳首を膨らませようね。そして、上下の歯で噛んであげよう!少しだけ痛いが我慢しなさい! 少しだけだから・・・」

    「……はい」

    ――カリ!――

    「あー」

    身体中に広がっていく刺激の波。

    「ほら・・・痛みが・・・変わっただろう?・・・鋭く強い電気が・・・・アソコに・・・流れていくのが・・・解るだろう?・・・もう・・・あそこはグチュグチュだね・・・・」

    「・・・・・・」

    男の言葉と強い刺激で我慢できなくなっていた。あそこが、ジーンと――。多分、濡れている。

    「まだダメだよ。もう少し、リカのカラダを味あうことにする・・・・身体中を撫で回して・・・お前のカラダの感じる場所を探すことにするよ、いいね、リカ!」

    「はい」

    もう、男の言い成りだった。

    「いい子だ、リカ! もう少しこちらにおいで・・・うん、それでいい! 背中を触りたいんだよ。お前の背中を・・・」

    「……」

    男の言うとおり、背中を向けた。着ていたブラウスを脱がされる。男の熱い視線を感じる。

    「気がついていないようだけれど、お前の背中から腰のあたりは・・・いい感じだよ」

    「……本当?」

    「ああ、本当だ」

    男がにこやかに微笑む。何だか、照れた。

    「ほら、ここだよ、ここ!・・・お尻の上から・・・こうやって・・指先で撫でるよ」

    「……あーん」

    「・・・なんだ・・もう、ゾクゾクしているのか? 可愛い奴だよ、リカは・・・。いい子だ。キスしてくれ」

    ――チュ!――

    「さあ、脱がしてしまうよ! いま、お前のカラダが、全裸のリカを見たい」

    えっ! でも――」

    さあ、全部脱ぎなさい、リカ!」

    「・・・・・・はい」

     男の言った言葉を待っていたように服を脱ぐ。何故、服を脱ぐのか――。そんな疑問も浮かばなかった。素直に男の意に従う。1枚1枚――。不思議と恥ずかしさは無かった。この男に見られていることが、反対に快感に思える。とうとう、全部脱いでしまった。手で隠す――。男の舐めるような視線が、私の感覚を刺激する。

    (そんな眼で見ないで――)

    「恥ずかしいか・・・・・・」

    「ううん」 

     私は、首を振った。恥ずかしい気持ちもあったが、それより、こんな姿を見せて良いのかという躊躇いの方が強かった。でも、この男が求めているから、それでいいのだと――。妙に納得させようとしていた。

    「どうかしたのか?」

    「こんな貧弱な身体――ご主人様にお見せするほどのものじゃない・・・・・・私、魅力もないし、綺麗じゃない・・・・・・でも――」

    「でも、何だい? ご主人様に話してごらん」 

    「ご主人様に見てもらいたい・・・そんな気持ちも――ああ、恥ずかしい……」

    「恥ずかしがることはないよ。とても、綺麗なんだから……自信を持ちなさい」

    「綺麗?

    とっても綺麗だよ」

    「綺麗……」

    男の言葉にぼーとした。

    「だから、こうしてお前を裸にして見ていたいんだ。じっと見ていても飽きないよ。そそられるところもあるよ。ほら、もう一度こちらにおいで・・・」

    「はい」

    男に誘われるまま、傍に行く。

    「いい子だ。さあ、カラダを触らせろ!」

    「……はい」

    男の言葉に抵抗できない。

    「うーん・・・柔らかくて気持ちいい・・・背中から・・お尻・・・そして太股と撫で回してやろう・・・上から下へ・・・そして下から上に・・・」

    「あー」

    「あああ、カラダが震えてきているよ・・・いい子だ! お前の肌が、皮膚が感じてきているよ。もう、リカのカラダのすべてが性感帯だ」

    「・・・ホラ・・ここも!」

    「あー」

    「ヨシ! リカ。横になって・・俺の方の脚を向けて・・・」

    男の言葉どおりに従う。そのまま、ベッドに身体を横たえさせた。

    「そうだよ・・・いい子だ! いきなり、さて、そろそろ・・舐めさせてもらおうかな? リカ」

    「えっ!そんな……」

    男の言葉に驚いた。いきなり、舐めるなんて――

    「さあ、リカ・・・力を抜きなさい! 脚を広げるよ・・・・」

    「あー、駄目」

    男に足首をつかまれ、そのまま広げられる。抵抗するほどの力が入らない。

    「う~~ん、もう少し・・・」

    「あー」

    人目に触れてない場所が、男の手によって開かれていく。

    「ああ、素敵だ。柔らかな白い腿の間に・・・黒いベールに包まれたお前の・・・女の部分が顔を出してきたよ」

    「……」

    「今は、この白い太股内側に魅力を感じている。・・・・細いお前の脚にこの柔らかな、そして張りのある太股を・・・・リカの膝の裏から・・・・ゆっくり爪を立てて撫で上げよう・・・ゾクゾクさせてやる・・・こうやって・・・ほうら・・・」

    「あああ・・・」

    「あはは、自然に脚がひらいてゆくね。いいんだよ・・・そのまま・・そのまま・・・蛙のように・・・脚を広げて俺にみせなさい・・・・俺はこの濡れた舌で・・・リカの柔らかな太股の内側を舐めて行くよ・・・ここから・・・そう・・リカの・・・濡れそぼっている茂みに向かって・・・こうやって・・・・ヌメヌメ舐めてゆくよ・・舐め舐め・・ナメナメ・・・・ヌルヌル・・・ナメナメ・・・気持いいよ、リカ」

     ……ああ……リカ……もう、駄目……」

     「う~~ん、いい子だよ、リカ! 自然にカラダが動いているね。感じているのがよく判るよ。今も気持ちいいけれど・・早く中心を舐めて欲しいだろ?そうだね・・・カラダが自然に悶えて動いてしまうんだね。・・ちょと、腰のあたりを押さえつけるよ!・・・こうやってじっとさせて・・・・濡れているリカの女の部分に・・・顔を近づけるよ・・こうやって・・・・ほら・・腿の内側に・・・俺の頬があたるね・・少し脂ぎっているけれど・・我慢しなさい!・・・ほうら・・・待っていたね。下から・・・俺の濡れた舌で・・・す~~と舐め上げようね・・・ほう~~ら・・・リカ~~!舐めるよ・・・・」

     男の熱い息がかかる。

    ――びくん――

    もう、おかしくなりそう……

     

    ――続く――

    August 24

    官能小説”ふたつの仮面を持つ女” 3話

    第2話より、続き――

     

    ――チュ!――

    わたしはキスされても、静かに目を閉じてじっとしていた。男はそっと頬に手をあて、わたしの柔らかな肌を感じている。でも、わたしは動くことも出来ず、そのままじっとしていた。

    ――びくん!――

    男は、わたしの唇にそっと近づいて、軽くキスをした。

    (柔らかい・・・・・・でも・・・・・・)

    わたしはちょっと緊張して、カラダを硬くする。

    「駄目だよ。そんなにカラダを硬くしちゃ。もう少し、カラダの力を抜いて・・・・・・」

    男の濡れた舌先が、ゆっくり――わたしの唇を割って……優しく舐める。

    (あー・・・・・・)

    優しい口付けが、わたしの心をときめかした。

    「さあ、リカ! もっと、こっちにおいで」

    男に引き寄せられるように腕の中へ。

    「・・・・・・はい」

    わたしは小鳥のように震え、男の胸にしがみ付く。生まれて初めて、男のひとに抱かれた日のように――。

    「うん、それでいいよ。恐くないからね、いい子だ」

    そんなわたしを男は優しく抱き締る。

    「……」

    もう、声さえ出ない。

    「もう少しだけ、唇を開けておくれ」

    「……」

    男の言葉に素直に従う。言われた通り、唇を少し開く。

    「うん、そうだよ。もう少しだけ――。うん、いいよ」

    男は、我慢が出来なくなったのか――少し開いた唇の間に、濡れた舌の先を差し込んできた。

    「柔らかな唇だ・・・・・・リカ」

    男の声が聞こえてきそうだった。

    「ほうら、入ってゆくよ……」

    (あー、駄目……)

    言葉で拒絶しても、濡れた男の舌を自然と招き入れている自分がいた。

    「もう少し開けて、受け入れておくれ」

    男の言葉に大きく、口を開く。

    「……うん、そうだよ。温かいよ……リカ……」

    男は、奥の方へと少しずつ舌を差し仕入れてきた。

    「素敵だよ。リカ!」

    男の舌を自然と受け入れていた。男の舌はするりと入り込み、蠢き始めていた。男の舌がそのまま絡みはじめると、一気に身体が崩れるような感覚と共に、快感が走って行った。すると、男は舌先を一気に押し込み、上顎の天井を舐め始めた。

    (あー、もう駄目・・・)

    もう、耐えられなかった。

    男のキスで身体が蕩けそうになる――もう、自分を保てない。男の左腕に凭れかかり、小さな身体を男に預けてしまった。

    本当に、リカは可愛いね。そして、こんなにも細い。俺のカラダにスッポリ入ってしまったよ」

    「……」

    何も答えられない――男の胸にしがみ付く。もう、すべてを男に委ねていた。男は、口の中で自分の舌を掻き混ぜながら、右手で髪を撫でている。

    (あー・・・・)

    その撫でられている髪にまでも、性感帯があるような・・・全身に電気が走る感覚をそっと味わっていた。

    (どうして・・・)

    男の舌と唇は留まることなく、わたしの小さな唇の上を――まるで、滑るがごとく、舐めている。

    ――チュ!――

    「リカ・・・・・・とても濃厚な口づけだったね。嬉しいよ。燃えるようなリカのカラダの想いが伝わってきた」

    「……」

    男の言葉で我を忘れ、呆然としていた。

    「リカの脚がモゾモゾと動き出しているね。もう、濡れてくれているんじゃないかな?」

    やがて、男の右手は左胸の上にそっと置かれた。

    「もう一度キスをくれるね」

    男は、唇を離し、一気に――わたしの左の耳もとに・・・・・・少しだけ触れる。すぅーと、舌の先で耳の淵を舐めてゆく。男の熱い想いが、わたしの耳の中に――。吐息となって吹きかけてくる。男は、わたしの耳に挨拶したら――

    ――チュ!――

    「あー・・・・」

    衝撃を感じる。

    (どうして、そんなにわたしを熱くさせるの? もう、耐えられない……)

    そのまま、耳の後ろの首筋に唇を移してきた。少し髪を上げられる。

    「う~~ん、綺麗な襟足だね。髪の香りも気持ちいい」

    ――チュ!――

    男は、襟足に音を立ててキスをしてきた。それから、襟足の髪の生え際を濡れた舌の先で、辿ってゆく。

    「いいよ。とっても、いい」

    生え際が男の唾液で濡れてゆく――。

    (熱い・・・・・・)

    「リカ……カラダが急に重くなってきたよ。感じてくれているんだね」

    「……」

    身体が自分のものじゃ無いみたい・・・・・・

    「もっと、もっと、襟足を舐めることにするよ。首筋から、ベロ~ッって舐め上げようね。もっと気持ちよくなって欲しいんだよ。リカ!」

    (あー、駄目! 変になりそう――)

    男の囁きと行為に酔いしれる。恥ずかしいが、下半身のあの敏感なところが一気に潤うような感じを覚えた。首筋の性感帯に唇を這わせ、男は舐めるように右手も動かしていた。

    「リカ! そんなに動いちゃダメだよ。ほら、胸が肌蹴てきたじゃないか――」

    男の言葉に――よりカラダが熱くなる。悦びを男に訴えた。

    「ああ・・・・・・」

    ただそれだけで、男は私の感情を読み取った。このまま続けて欲しい。もっと、深く――

    たぶん、この吐息はこう言っていると男は感じた。

    「こらこら、俺を刺激するから――」

    「・・・・・・?」

    「リカのお尻にあたっているだろ?」

    そう言えば、何か硬いものが当たっている。それって――。顔が赤くなっていく。

    「いいかい? ボタンを少し外すよ」

    男の行動は、一気に加速する。ブラウスの釦に手をかけた。ゆっくり、ひとつずつ外してゆく。抵抗さえ出来ない。

    「鎖骨が深くえぐれているね。綺麗な肌だ――」

    「……」

    男の言葉を聞いて、より恥ずかしさが増した。

    「ダメだよ、隠しちゃ!」

    「……」

    上げた手を摑まれる。

    「いいかい? 首筋から、喉元に唇を這わしてゆくよ」

    男の言葉が耳に届く。その度にカラダが熱くなった。

    「少しヌルヌルするけれど我慢して・・・俺の唾液をリカに染み込ませるんだから――」

    「……」

    「ほら、舌が下がってゆくよ。開いた胸元に――柔らかなこの盛り上がり――」

    「あー・・・」

    一瞬気を失うかと思った。それ程、身体中に快感が走っていた。

    「俺の熱い手で触れさせてくれるね?」

    「……はい」

     小さな声で頷いた。

    「リカ! 触るよ・・・」

    胸のふくらみに沿って、指で触れてくる。男の右手の指の動きは絶妙だった。強くなく、弱くなく、それぞれの指が独立して動いているような――

    ――びくん――

    (……あー、駄目! そこは――感じちゃう……)

    「いい反応だ、リカ!」

    少し揉まれるだけで、感じる。

    「嬉しいよ」

    男は、胸の形通りに手の平を創って、そっと触れてきた。優しく・・・優しく・・・

    「柔らかだよ、リカ……俺の大好きなオッパイだ! 少しだけ力を入れるね。胸の柔らかさを感じていたいんだ」

    「……だめ……」

    「気持ちいいよ、リカ!」

    「……あー・・・・・・だ・・・・・・め……」

    「ああ、少し起ってきたね。いい子だ、リカ! ご挨拶するよ! ほら、舌の先で――乳首の先を濡らしてあげようね」

    「……あー……」

    もう、声も出ない。体中に広がる刺激――心地良い感覚・・・・・・。

    「う~~ん。濡れて光っているよ。柔らかくて気持ちいいよ、リカ!」

    そんな事をされたら……もう、我慢できない――)

    「ほら~、動かないで!」

    「……」

    あー、気持ちいい。もっと、舐めて!)

    「動くと、ついつい手に力が入ってしまうじゃないか・・・・。強く揉んでしまうよ」

    「んー」

    「こうやって、唇の間に乳首を挟んで・・・・中に入った乳首の先を・・・俺の舌で・・・突いてやるよ・・・こうやって・・・・・・・。痛くしないからね」

    「んふー」

    「ああ、また悶える! ほんとうに敏感になったね。嬉しいよ! もう少し舐めて、噛んであげようね」

    「あー」

    「こうやって・・・アソコに向かって電気が流れ始めて来たね・・・・リカ」

    「・・・・・・」

    「ムズムズしてきているのかい? カラダが悶えているよ。もう、ちょっとこのままだよ。好きだよ、リカ」

    ――チュ!――

    あー、身体が熱い……こんなに感じ易かったの? それ以上は、駄目! 乱れちゃう……)

    「あー・・・・・・」

    乳房を揉む感触は、最高に心地良かった。男も、私の吐息に男自身を持ち上げていた。先が確かに濡れ始めていることだろう。

    ――トゥルルルル――

    その時、電話が鳴った。

     

     

    ――続く

    August 13

    官能小説”マリオネット” 改訂版 最終話

    第5話より――続き・・・
     
    ――どき、どき、どき――
     見ず知らずの男の視線を感じながら目を閉じ、ベッドの上でじっとしている私・・・・・・それも全裸で……。そう――ゴヤの“裸のマヤ”を思い出した。頭の上で腕を組んでみる。その方が落ち着いた。
    (何故、此処にいるんだろう? これから、どうなるのかな? わたし――
     頭の中を掠める想い――それでも、此処から動く気になれない。
    「綺麗だね」
     男の声が響いた。
    「えっ!」
     驚いて目を開けた。にこやかに微笑む男の顔を見て、急に頭に血が上る。
    「本当だよ。こんなおじさんが、君の裸を見てしまって良かったのかな?」
    「……」
     言葉にならない。
    「どうかした?」
    「いいえ……」
     急に恥ずかしさを感じ、手で顔を覆う。
    「恥ずかしい?」
    「はい……見られているのも恥ずかしいけど、綺麗って言われるような身体はしていないし――どうしたら良いのか?」
     困惑した。どうしたら良いのか、本当にわからなかった。でも、隠すところが違っているような気もしたけど――もっと見て欲しいという欲望が、私の中に生まれていた。
    「恥ずかしがらないで、とっても綺麗なんだから――
    「そんな……だって、胸は無いし――
     軽く胸に触れてみる。小さな手に収まるほどのふくらみ――
    「胸の大きさなんて、気にすることじゃない。それは、個人の好みだから――。はっきり言って、私は大きいのは好きじゃない。君の胸がとても素敵に見えるよ」
    「本当に?」
     男の言葉に覆っていた手を外し、顔を上げた。
    「ああ」
     返事する男の顔が、妙に照れていることに気付いた。
    「あのうー、良かったらもう少し詳しく教えて頂けませんか?」
     私は、男の顔をみて言った。意外にも大胆な発言をする。こんなにも度胸があったのかと思う。
    「いいが――
    「?」
    「ああ……私の感想を述べよう」
    「はい! お願いします」
     ベッドの横たわりながら、男に頼んだ。
    ――ふぅー――
     男が大きく息を吐いた。
    (何を言われるんだろう――
     男の言葉を静かに待った。
    「……」
     しかし、何も聞こえてこない。
    「?」
    「……」
     いくら待っても、やっぱり何も聞こえてこない。
    「あのうー」
     男の言葉が待っていられなくて、声をかけた。
    「すまない……言葉が思い浮かばないんだ。あまりにも綺麗で――
    「えっ!」
     男の言葉に驚いた。
    「本当に私が見て良かったのだろうか――
     男が後悔している様子がわかった。
    「意味がわからないんですけど――
     本当にわからなかった。こんな貧弱な身体を見せてしまって、後悔するのは私のほうだ。――なのに、男が後悔している。何故?――
    「ごめんなさい!」
     私は、男に悪いことをしたと思った。素直な気持ちで、思わず抱きついた。
    「……」
     男は面食らっているようだった。
    「ごめんなさい。私が無理言ったから――。あなたを苦しませるつもりは無かったの」
    「……違う。そうじゃないんだ」
     男が、ぼそりと呟いた。私は、その時気付いてなかった。男の本当の気持ちを――
    「……このままだと、私は君を抱いてしまう……」
     男が意外な言葉を口にする。苦渋の表情を浮かべている。
    「えっ!」
     男の態度の急変に驚いた。
    「――それは、駄目だ!」
     男が、抱きついていた私の手を掴んで、外す。そのまま、肩を押した。
    「私は、汚れているんだ。君のような子を抱く資格が無い」
     男は項垂れたまま、言葉を続けた。
    「そんな――貴方は、汚れてなんかいません。私に、素敵な言葉を下さいました。勇気も――
    「それは違うよ。君は、最初から勇気をもっていた。見ず知らずの私の前に、君はその汚れない身体を披露してくれた。私は、ただ素直な感想を述べたに過ぎない」
    「……」
    「もう、いいんだ。服を着なさい」
     男は、くるりと背を向けた。その後姿を見たとき、私の中に生まれた不順な思いに気付いた。
    「ごめんなさい」
     思わず、出た言葉。
    「君が謝る事は無いだろう」
    「いいえ、私――横たわりながら、ある妄想を抱いていたんです」
    「えっ!」
     男が振り返った。その顔から、驚きが生まれた。
    「座って話そう」
     立ち尽くす私に、男は上着をかけ、そっと肩を抱いて、ベッドに座るように促した。
    「何か、飲むかい?」
     立ち上がった男は、優しく言葉をかけてきた。
    「はい、頂きます」
     私は、男の優しさに甘えた。男は、さっきのように水割りを作ってくれた。
    「アルコール以外の方が良かったかな?」
     軽く笑みを零す。その微笑みに救われる。
    「いいえ、今はこの方がいいです」
     渡されたグラスに口をつけた。ほっと一息つける。
    「そう……なら、良かった」
     反対に、男は、手にした水割りを一気に飲み干した。
    「私……貴方に見られて、背中を触られて――。今度は、前も同じようにされるんだろうなって思ったんです。 それで、自分ではすべてを見せたつもりでいたんですけど――
     話しながら、思わず口篭もる。
    「うん」
     男は、優しく微笑んでくれた。
    「君はまだ見せてないところがあるって――
    「見せてないところ?」
    「……アソコ……」
     私は、小さな声で呟いた。言葉にして、赤面する。
    「……」
     男は、その言葉を予期していなかったのか――面食らっている。
    「ごめんなさい。貴方に見られて、舐められることを想像してしまって――
     私は、頭を下げた。嫌な思いをさせたと思った。
    「いや、いいんだ」
     男も何かを感じていたようだ。
    「私、付き合っている彼がいるんですけど、遠距離で――。最近はなかなか会えなくて――。彼は、結婚しようって言ってくれているんです。私もそうなるとは思っているんですけど、このまま流されるように結婚するのかなって。Hだって、倦怠期じゃないんですけど、楽しくなくて――。彼、入れて出す感じで、私に魅力ないのかな?って。このままじゃ、だんだん朽ちていくような気がして――。彼のこと好きなんですよ。でも――なんか――
     私は、思っていたことを口にした。
    「最初にも言っただろう。君は、十分魅力的だよ。だから、部屋に連れて来てしまった。君に対して、私は――
     男は、苦しそうな顔をしている。
    「君を見て、触れ、男の欲望を湧き立てていたんだから――
    「……」
     意外だった。男は、そんな態度を示さなかった。いや、私が気付こうとしなかっただけかもしれない。男は、ずっと気持ちを抑えていた。いつでも、襲うと思えば襲えたのに――。私の心の中には、不安が渦巻いていた。ある意味、そうなる事を期待していた危惧さえある。
    「帰りなさい」
    「えっ!」
     男の言葉に驚いた。
    「君は何も無かったように、此処から出るんだ。そのほうが良い」
    「でも――
    「君は、もう大丈夫だよ。一時、私の操り人形になりかけたが、君には強い気持ちがある。だから、もう私がこれ以上力を貸す必要は無い。さあ――
     男は急き立てる。
    「でも――
     そんな強い気持ちを持ち合わせているように思えなかった。まだ、何も変わっていない。
    「いいかい? わかっていると思うが、私たちはもう知らないもの同士。多分、逢うことは無い。もし逢うことがあったら、その時は『初めまして』だよ。わかったかい?」
    「……」
     言葉にならなかった。瞳が潤んでくる。
    「楽しかったよ。いや、嬉しかったというべきなんだろうか――。君のような若い子の綺麗な身体を見せてもらえたんだから――
    男は、憂いを満ちた表情を浮かべた。
    「……貴方のこと……」
    「私のことは、いい。いいんだ。気にすることは無い」
    「さあ、早く服を着て行きなさい。私の気が変わらないうちに――
     男に背中を押された。
    「ごめんなさい」
     私は急いで服を着て、部屋を出た。
    ――ふぅー――
     背中で、男の吐いた溜息を聞いたような気がした。部屋を出た途端、涙が溢れてきた。何故か――
     
     私は、男の何に惹かれたのだろう? 同じ匂いを感じたのは、確かだった。もう、逢う事はない――。
     
     
     俺は――
    ――ふぅー――
    (これで良かった……。)
     俺は、心からそう思った。オンナに手を出さなくて――。このオンナが前を向くまでは、俺はこのオンナに自分の欲望を剥き出しにしていた。気付かれないように――いや、多分このオンナは気付いていた。でも、俺のために気付かぬ振りをしてくれた。優しさ?期待?――今思えば、そんな気さえする。しかし、いいオンナだった。手を出さなくて良かったという想いと俺のものをぶち込んでやりたかったという想いが交錯している。本音を言えば、あのオンナの柔らかな肌に触れ、このまま何もせずに帰す事自体男の沽券に関わる。出された膳を食わなかったのだから――。でも、じっくり鑑賞するほどにオンナに手が出せなくなった。それは、あのオンナが穏やかな表情を浮かべ、安心し切った顔で瞳を閉じていた。俺を信用している。そんなオンナに手が出せるはずが無い。
     それ以上に、絵画を見ているような感覚に囚われた。そう――ゴヤの“裸のマヤ”のように横たわっていた。絵から抜け出たオンナ。そりゃあ、胸の大きさには違いがあるが、あのオンナは俺の“マヤ”だ。美しさに溢れていた。その美しさに惚れた。
     本当はオンナの小さな胸を揉んで、尖った乳首を口に含み、舌の上で転がし、その味を堪能したかった。きっと、舐めるほどに味わい深い感がある。あのオンナは、未開のオンナだ。咄嗟のそう感じた。男の勘と言う奴か――俺が開発したい。そう思えたのも当然かもしれない。あの繁みの奥の薔薇は、どんな味がしたのか――。きっと、あのオンナは――俺のいきり立ったものを快く迎えてくれる。俺の欲望を満足させてくれる。そう感じたのも事実だ。このオンナもそれくらいの覚悟は出来ていたはずだ。でも、俺の中の理性が働いた。
    (今、手を出すんじゃない!)
     何故? そんな事を思ったのか――また、逢える事なんかないのに――。でも、手が出せなかった。それで、良かったと思っている。そう、思うしかない。しかし、いいオンナだったなぁ――
     
     
    「麻生課長、どうぞ……」
     女性社員に御茶を勧められた。滅多にないことだ。昔は、お茶組の女性社員がいたが、今の時代――男女雇用均等法なるもののお陰で、気安く御茶も頼めない。部屋の隅の机の上に自分で入れられようにセットしてある。それが、どうだろう? 今日は、わざわざ女性社員のひとりが御茶を勧めてくれたのだ。
    「あ、ありがとう……」
     素直に礼を言う。
    「あのう……」
     その女性社員が躊躇いがちに声をかけて来た――
    「何かな?」
     笑顔で訊ねる。
    「何か――いい事でも遇ったんですか?」
    「えっ!」
    「だって……出張から御帰りになってから、表情が明るくなって――」
     この頃、俺の様子がおかしいと噂になっている事を女性社員から知らされた。何だか、ウキウキしているとも――。
     そう――あのオンナの事が時折、思い出される。今思えば、夢のような出来事だった。あのオンナの美しい裸体を思い出すたびに笑みが零れる。俺にとって、女神のような気がしていた。ビーナスのような姿態――
    「ちょっと、いいかな?」
    「あ、はい。部長」
     思い出しながらにやけていたら、部長に声を掛けられた。
    「紹介しよう。今日から、わが社の担当になった――」
     
    「初めまして。今度、こちらの担当をさせて頂くことになりました米倉敦子です」
    「初めまして、営業の麻生です」
    「宜しくお願いします」
     
    女が手を出した。俺の胸は高鳴った。出された手を掴む。
    (あのオンナだ!)
     磁石が引き合うように、再び、出逢った。これから俺は、愛と欲望の狭間で悩み、苦しむなんて思わなかった。ただ今は、オンナに再び出逢えた悦びを感じていた。
     
     
    ――おわり――
    August 11

    官能小説”マリオネット” 改訂版 5話

    第4話から、続き――
     
     
     
    「綺麗だよ……」
    「えっ!」
     男の言葉に耳を疑う。
    「本当に綺麗だよ」
    「嘘!」
    「嘘じゃない。君は、自分を知らな過ぎる」
    「自分を知らない?」
     男が言っている言葉の意味がわからない。
    「そうだよ。そんなに恥ずかしがらずに胸を張ってごらん?」
    「でも……」
    「やっぱり、恥ずかしい?」
    「……はい」
    「私は、君のすべてを見たいよ。本当にそう思う」
     男が思わず、想いを口にした。
    「えっ!」
    「あっ! ごめん。私の意思は示さない約束だったね」
    「いいえ、いいんです。今は、あなたの意見が聞きたい。お願いします……」
     思わず、男に懇願した。
    「えっ! いいのかい?」
    「はい。私を見て、素直な感想を教えて欲しいの。自分じゃ、わからないから――」
    「……わかったよ。君の望む通りにしよう」
     男は椅子から立ち上がり、側に近づいて来た。
    「恥ずかしいかい?」
    「はい」
    「じゃあ、うつぶせになるといいよ。少しは、恥ずかしさが緩和されるかもしれない」
    「そうですね」
     男の言葉に促され、うつぶせになった。
    ――ふぅー――
    言われた通り、気持ちが楽になった。視界に何も映らない。妙な安心感を覚える。
     
     
     一気に裸になったオンナは、少し困惑していたようだ。 彼女にとっては清水の舞台から飛び降りたような思いだったに違いない。そう――飛び降りたところが、今まで誰にも見せたことのないであろう、裸身だ。僅かに所在なく立ちつくすような格好でいた。 思った以上に美しい裸体だ。均整が取れている。肌の色も綺麗だ。恐らく触っても感触のいい肌に違いないだろう。俺は勃起することを忘れるほど、そのオンナの裸体に見とれていた。 この時は、美術鑑賞でもしている風景でもあった。
    「綺麗だよ……」
    つい出てしまった言葉に、オンナは素早く反応した。それには意外であった。 普通なら――甘い感嘆の声を発しながら、照れと謙遜の言葉を続ける筈であるのに――。このオンナは意外な言葉を―― 「え?」と驚いているのである。これには俺もどうしていいのか、一瞬戸惑った。 オンナに事実であることを伝えた。本当のことでもあるので無理な事はなかった。この時に、少し理解が出来た。このオンナの望むものが――。自分では解らないもの――そして自分に持っているであろうものを見て欲しい、見つけて欲しい。そして、出来ればそれを引き出して欲しいという想いが募っているのだろうと感じた。恐らく間違いはないと確信もした。

     
    「……綺麗だ……」
    「えっ!」
     ほっとした耳に男の呟く声が聞こえた。
    (そうだ。彼がいたんだ……)
     そのことを思い出した――途端、体が熱くなる。
    「えっ! 今、なんて言ったの?」
     恥ずかしさが復活し、彼の言葉を聞き逃した。
    「綺麗だって言ったんだよ」
    「えっ!」
    「驚くことはないだろう? 素直な感想を述べただけなんだから……」
    「綺麗って……」
     恥ずかしさと誉められた意外性に頭がくらくらする。
    「そうだよ。背中から、お尻のラインが綺麗だ。それに、可愛いお尻も美しい。盛り上がった山の 形も良い。私好みと言った方が良いかもしれないね。思わず、触れてみたくなる。いいや、このまま眺めていたいね。いつまでも――」
    「そんな……」
    「何?」
    「そんなこと……」
    「そうだね。自分で見たことがないんだから、仕方がないか――。信じられないかもしれないね」
    「はい」
     自分のお尻なんて見たことがない。まあ、胸がない分――少しはマシかも知れないとは思っていた程度。綺麗と言われて反対に驚いた。
    「それでは、私なりの感想を言おうか?」
    「はい、お願いします」
     男の熱い視線を浴び、少し身体が萎縮する。でも、聞きたかった。男の口から直接――。
    「そうだね。丸い小高い二つの山の綺麗な丸みとその形の美しさに惚れ惚れするよ。若いから張りもある。太股まで流れる線も美しいね。太股から――その丸みに沿って、そっと撫でて見たくなるよ。それに、腰のくびれと太股の柔らかさのコントラストもいい。その二つの山の谷になる部分までもが、美しい綺麗な陰を残しているよ。僅かに開いた腿の間から現れる黒い影が――なんとも美しい。そっと、押し広げて、丸いお尻から裾野に落ちる滝壺の様な君の花びらを見てみたい。きっと、一輪の薔薇の様だろうね。その薔薇をこの美しいお尻と一緒に眺めていたいよ。こんなにも美しい身体は芸術品だ!」
    「……」
     男の言葉に、何も言えなくなった。恥ずかしさが悦びに変わる。こんなにも、言葉で賞賛されたことはなかった。それが、嬉しかった。女として生まれた喜びを感じた。
    「本当にそう思うの?」
    「ああ、そうだよ。そっと、撫でていたい気分だ」
     男がにこやかに微笑んだ。
    「いいですよ。触っても――」
    「えっ! いいのかい?」
    「撫でるだけなら、構いません。こんなにも誉めてもらって嬉しいから。あなたにも感じて欲しい」
     言葉の賞賛を浴び、嬉しさのあまり男が触れることを許した。
    「本当にいいのかい? 私が触っても――」
    「はい」
     男の行動を受け入れた。
    「じゃあ、触るよ」
     男が嬉しそうに手を伸ばす。
    「はい」
    ――びくん!――
     男の手が背中に触れた。そのまま、お尻から、太腿、脹脛へと下りていく。そして、爪先まで行って、反対側の足から上へと上がっていく。
    (気持ちいい……)
     男の撫でる行為に、ただ身を任せた。快感が、漣のように全身に広がっていく。心が、自然と落ち着いた。
    「思った以上だよ。この感触は、言葉に出来ない」
    男は、それ以上の事はしなかった。ただ、背中を順序良く撫でていく。そっと、優しくスピードを変えることなく、その行為をただ繰り返すだけ――。
    ――びくん!――
    時折、体が震える場所があることに気づいた。
    (これって、性感帯?)
     でも、その刺激がまた、快感を呼ぶ。
    (こんな感覚――初めて……)
    男の行為にうっとりする。肌が上気している気がした。
    「気持ち、いいかい?」
    「はい。とっても――」
    身体だけじゃなく、心も解放されていく気がした。
    「そう……私もだよ」
    男が、微笑を浮かべた。それ以上の言葉を交わすことなく、静かな時間が過ぎていく。
     

     
    このままではいけない。このオンナの今の不安を取り除いて、もう少し自由な気分にさせてやらねばと思い、オンナを横にさせた。その時、一番始めに目についたのが、オンナのヒップである。尻だ。なんて形のいい尻なんだ。これもオーバーかもしれないが、芸術品のような「尻」だ。 俺は素直にオンナの「尻」の美しさの感嘆の声を出した。再び――
    「綺麗だ・・・」と――
     
    オンナは信じられないと言う表情をした。 俺は本当の想いと、オンナに少しばかりの自信を持たせる意味でも、オンナの「尻」の美しさについて、言葉に色づけしながら伝えた。――と言うのも、男の欲情から感じているのだと思われたくなかったかもしれない。でも、実にいい「尻」だ。その時、俺の脳裏には次のステップの映像が断片的に記憶の中から、ピックアップされていた。美し過ぎるオンナの「尻」だが、その小高い肉の山の間にある谷の底には、深紅の薔薇が埋もれているに違いない。映像はさらに、その谷間に俺自身の高まりを一気に差し込んでいる図に代わった。その白く美しい「尻」の間に――俺の赤黒い肉の塊が突き刺さっている構図である。その映像が脳裏に浮かんだ瞬間、俺は一気に身体が熱くなり、その熱い血液が俺の股間に集まってくるのが、震えるように伝わってきた。
    その熱い思いは――「触れたい」という言葉に置き換えて、オンナに伝えた。直ぐにオンナは承諾してくれた。あっさりと――。正直に嬉しかった。俺の熱い手をオンナの身体に触れることにする。今、一番触れたい「尻」は、最後にとっておこう。
       横たわった身体は――細い身体だ。オンナとしての丸みも充分持ち合わせて、俺の欲情をいっそう、そそる身体の持ち主だ。俺は、はち切れそうになる股間を、僅かに引きながらオンナに近づいていった。 今回、オンナは俯せの形なので、俺の股間の欲情を知られないで済んだ。背中に手を伸ばす。
    人間は目以外に肌にも目があるようだ。未だに触れていないのに、そして俯せで見えていないはずなのに――オンナの背中は俺の手の近づくのを察した。それは、オンナの形のいい肩胛骨の筋肉が僅かに動いたことで解った。いわゆる背中の目である、オンナの筋肉は俺を察知したようだ。俺は――最初は手の平の部分で、そっと触れた。
    ――
    ピクッ!――
    オンナは反応する。敏感な身体だ。すこし嬉しくなる。この反応は男の欲情をさらに増幅させる。もっと、してやりたいと思うからだ。さらに、背筋に沿って――今度は、指先を僅かに立てながら首の襟足からゆっくりと、指先で肌を感じながら――下へ伝い降りてゆく。指先は、背骨の部分から身体の細さを伝えながら、オンナの身体の震えも、俺の五感に伝えてくれる。
     
    そのオンナの僅かに震えるカラダの悦びを楽しみながら、指と手を憧れの「尻」に運んでいった。それは想像以上のものであった。形は、見た目もいいのは解る。触れたときの感触も、すこぶるいい。その張りと柔らかさのバランスも――。オンナは自分では気がつかないでいるようにしているが、実のところ――先ほど、背中からの段階で感じているはずだ。そして、手の平と指先で、その丸い肉の小山を撫で回したときには――尻の反応を自分で抑制しているかのように見えた。恐らく間違いないだろう。形だけでなく、感度もいいオンナのようである。その時の俺は、自制を失いかけていた。このオンナの身体に溺れ始めたのかもしれない。もう、股間は完全にいきり立っている。目に見えている状態なのである。たぶん、その先からは・・・我慢汁が出始めている筈である。少しだけ苦笑した。パンツが濡れている頃かな――?なんて……
     
    自然にオンナに触れる手が、欲情を伴った熱い手に変身していた。時折、軽く爪を立てるように――硬い感触をそのオンナの肌に刺激する。また、べっとりと、ヌメリのある様なしつこさのある手の平の動きもオンナの肌に伝えることにした。ともすれば――ついつい揉んでしまいそうで、それを抑えるのには苦労した。
     
     
    「あのう――」
     勇気を出して、男に声をかけた。
    「何かね?」
    「……前も、見て頂けますか?」
     思わず、口から出た言葉。そん勇気が何処に有っただろうと思うほど――。撫でる行為にただ身を任せているこの時間――それはそれで心地良かったけど、それだけじゃ前に進めないような気がした。
    「いいのかい?」
    「はい」
    「じゃあ、仰向けになりなさい。あっ! 私の意思は示してはいけなかったね」
    「いいえ、もういいんです。気になさらないで――」
    「ありがとう」
     男が笑みを浮かべた。それを見届けてから、仰向けになった。
    (彼は、今度はどんな言葉を私に浴びせてくれるのかな?)
     そう思いながら目を閉じ、じっとした。男の熱い視線を浴びながら――
     
     
     オンナは俺の思いを受け取ってくれたのか――身体を自分自身で抑制しながらも、僅かに悶える。そして、その悶えと自身の抑制との葛藤を身体の震えという形で知らせてきた。オンナに問うてみた――今の想いを――すると、正直な感想を述べてくれたので、心の中で「ヨカッタ~」と――。 こんないいおんなに触れることが出来るなんて――凄いとさえ思っていた。すると、オンナから声を掛けてきた。だから――
    「何かね?・・・」と――
    August 10

    官能小説”マリオネット” 改訂版 4話

    ――3話より、続き
     
     
    「どうかしたの? 嫌なら、いいんだよ」
     
     男が、優しく声をかけてきた。
    「ううん……嫌じゃ、無いけど――」
    「けど――何?」
     男が詰め寄ってくる。
    「恥ずかしいの。だって、知らない人の前で、服を脱ぐなんて――」
     言い訳をした。本心は違う。
    「やっぱり、嫌かい?」
     男が残念そうな顔をしているのがわかった。
    「ううん、そうじゃないの」
     否定したのも、別に期待させたいわけじゃない。
    「なに?」
     男が、素直に聞いてきた。
    「あのー、変なんです。見られている事に妙な興奮を覚え、心地良さを感じている自分がいるんです――けど、人に見せられるほどの身体はしていないし――」
     言葉を発して、俯く。まだ、多少の迷いがあった。でも、それだけじゃない。
    「それは、君が思っているだけの事じゃ無いのかな? 私は、そうは思わないが――」
    「えっ!」
    「君は、自分の魅力に気がついていないだけかもしれないよ」
     男がにこやかに微笑む。
    「魅力? 私に魅力があるんですか?」
     思わず、男に詰め寄った。
    「あるよ。だから、私は君を見ていた」
    「えっ!」
     驚いて、男の顔を見つめた。変わらない笑みを浮かべている。その微笑に救われた。
    「嘘じゃない。だから、眼が合っただろう?」
    「そ、それは――」
     確かに、そうだった。目が合った。その時、ドキッとした。心が惹きつけられた。
    「それだけじゃ無い……」
    「えっ! なに?」
    「君は、探していた……」
    「……(私……男を探していたの?)」
      余りの言葉に絶句した。
    「くっ、くっ、くっ」
     男は、いきなり口を押さえて笑った。
    「……」
     男の行動に目を丸くする。
    「ごめんよ。君の驚きが可笑しく思えたんだ」
     男は、子供のように笑っている。
    「……?」
    (私、馬鹿にされているの?) 
     男の言葉の意味が、さっぱりわからない。呆然となった。
    (違う――遊ばれている?)
     そう思うと、頭に血が上った。ぐっと、拳を握り締める。
    「あははは……ごめん……」
     男は、堪え切れずに声を出して笑った。
    (私は、馬鹿だ!)
     悔しさが込み上げてきた。
    「ごめん。思ったより、素直で驚いたよ。可愛いね。本当に――」
     男の緊張が、一瞬で解れた。小さく息を吐く。
    「いやあ――別に、君が男を捜していたと言っている訳じゃ無いよ。自分を解放してくれる――そう、何か……切っ掛けを作ってくれる人を探していたんじゃないか? たまたま、それが私だった……」
    「えっ! そんなことは――」
     心が動揺している。咄嗟に、誤魔化した。男の言葉に、逆上せた血が引いていく。
    「ないとは言わせないよ」
     男が言い切る。はっきりと――。その顔が真剣だった。
    「……」
     言葉にされ、力が抜けた。心の中を完全に見透かされている。
    (この人の前では、私は嘘をつけない――)
    「あー」
     想いも、言葉にならない。
    「私が、君の力になってあげるよ。いや、君の力になりたいね」
     男が笑みを浮かべて、思いを口にする。
    「……」
    それに引き換え、私は声さえ出ない。
    「そう――何も怖がらなくていいんだよ。私は、君に対して自分の意志を示さない。だから、安心するんだ」
     男が、納得させるように声をかけてくれた。
    「……」
     今度は嬉しくて、言葉にならない。男の言葉は真実だと思えた。安心感が広がっていく。
    「そうだ。私は、今から君のマリオネットになろう。君の意志に従う――ただのマリオネットになるよ。君は、君のしたいようにすればいい。ただ、私も男だから――思ったことは口にするかもしれないよ。それは、許してくれるね」
    「はい」
     素直に頷いた。拘りもない。素の私が、そこにいた。何故か――
    「だから、これ以上脱ぐのが嫌なら、止めればいい。それは、全て君の意思次第だよ。強制はしない」
     男の言葉で、反対に背中を 押された気がした。
    「私――」
     気持ちが固まった。もう、怖さはなかった。
    「脱ぎます。このままじゃ、駄目――そんな気がするから……」
     男の言葉に、はっきり――自分の意思を示した。
    「そう――君の思うとおりにすれば、いい。私が見届けてあげよう。いいね?」
    「はい! お願いします」
     見知らぬ男に対し、強く意思を伝えた。そう――いつも、何か流されていた。今も。流されているのかもしれない。でも、何かが違う。そんな気がした。後戻りも出来ないような気も――。
    ――ばさっ!――
    過去を脱ぎ捨てるようにブラウスを脱いだ。ブラも外す。ショーツも脱いだ。生まれたままの姿を見知らぬ男の前に曝け出す。でも、恥ずかしくて――手で胸を隠した。顔も上げられない。
     
     
     
     オンナは自分を見て欲しいと言い出した。 もしかしたら、俺が言わせてしまったのかもしれない――とも感じた。しかし、俺はそれを直ぐに否定した。 それは、オンナの今までの想いが、一気に塊となって噴出したような言葉だった。 苦しんでいたのかもしれない。
     
    やり直したい――リセットしたいというものでもない。 今の環境にある自分自身は、否定をしていないようである。即ち、自分が嫌で嫌で仕方無く、なんとか今の自分を無にして、新しい自分を
    創り出したい――と、いうものでもないように感じていた。 このオンナは、今の自分の中に燻り続けているもうひとりの「おんな」の存在に気付いているに違いない。それが、何かの切っ掛けで沸々と音を立てて蠢き始めたのではないだろうか? そこで――自分では見えない背中に付いたホクロや、身体に入り込んだアリを探してもらうように自分を見て欲しいと言い出したのかもしれない。それは、普通に話している言葉の裏側に貼り付いてるものかもしれない。 俺に観ろと言われても――。俺は、そこまでこのオンナの裏側まで見る余裕があるのだろうか?――
     
    オンナは俺の視線を男の視線としても捉えてくれていたようだ。 そこで、男の俺に対して、自分を曝け出す事によってすべてを見てもらいたいと考えているようだ。 俺は、自分で言い出しておいて何処まで冷静の見ていられるのか自信が持てない。 自分自身オンナに飛びかかるのではと、自分に不安を持っているくらいだ。
     
    しかし、オンナの話はよく判るのだ。 自分を一度曝け出し、すべてを見せて、気楽になってしまいたい。その上で、オンナの中にあるもうひとりの「おんな」の存在を見つけ、 出来れば引きずり出して欲しいとさえ考えているようだ。
     
    窓の外には高層ビルに夕陽が当たり、今この中で行われようとしている事が、まるで映画の世界のように、ビルのサッシからの反射光が部屋に映し出されている。これは、現実なのだろうか?
     
    オンナは自分を見て欲しいと、着ているものを脱ぎ始めた。 もちろん、俺はそれを望んでいる。間違いなく望んでいる。しかし、けっして強制はしていない。しないつもりでいる。それは無意味だからだ。 このオンナの意思が必要なんだ、絶対に――。 それは、オンナの為だからだ。 このオンナは、きっと解ってくれるはずである。
     
    やはり、このオンナは頭のいい女の様だ。 俺の気持ちや考えを理解しくれたようだ。
    一度、綺麗な脚を俺に眩しいくらいに見せつけて、その後躊躇した。俺は少し戸惑いを感じたが、ここはオンナの意思に委ねることにした。 本音は、「そりゃあ~、ないよ~~」とでも言いたい気分でもある。
     
    脚の美しさ、そう自然に出てしまったが、美しいという表現が良く合う脚だ。すんなりとしていて、けっして長くて細くてというモデルの脚ではないが、オンナを、そして僅かに少女を感じさせる脚を持つオンナである。
     
    暫くして、オンナは意を決したように、上半身の衣服も脱ぎ始めた。それは、ストリップティーズのような優雅さはもちろんない。 むしろ、潔い良い脱ぎ方である。 乳房を隠しながら――小さな布きれを腰から降ろすときには、流石(さすが)に手が一瞬躊躇っていた。俺は嫌な奴だ。その様子を見逃さなかった。その光景が、俺の身体の中のものを沸き立たせていた。
     
     
    驚いた!
     少し大袈裟な表現かもしれないが、そのオンナの身体はビーナスの様だった。今までに見たことのない美しい身体を持つオンナだった。 俺は知らず知らず――見とれていた。 このオンナ、若い女だったんだ。予想以上に若いおんなだった。俺は、自分の考えとこのオンナの若さに不釣り合い感じた――というよりは、己の老いに恥ずかしさを覚え、オンナの身体が眩しかった。
    このオンナの身体は宝石だ!)
    何故かは解らない。 眩しいくらい綺麗だったのだろう。 もっと見ていたい欲望と、出来れば触れたいという欲望さえ出て来ていた。綺麗なカラダをもっと知りたいと感じていたから――。またしても、口から自然に溢れた――
     
    「綺麗だよ……」
    August 09

    官能小説”二つの仮面を持つ女”2話

     
    1話から続き
     

    「どうしたいのかな? 君は――」

    男が冷ややかに言った。

    「・・・・・・」

    一体、どうしたいのか?――自分の意思が、はっきり見えない。

    「いきなりじゃわからないかな? でも、君は薄々気付いているはずだ。私と出逢ってから、その会話の中で――」

    「・・・・・・」

    何も返答できない。

    (怖気づいた?)

    違う! わたしの心は確かにこの男を求めている。

    「黙っていちゃ、わからないよ。ご主人様の命令に従うのかい? 従わないのかい?」

    「・・・・・・あー」

    男の言葉に上手く返答できない。

    「それとも君は、自分のしたい事をご主人様に願い出る方がいいのかなぁ――さあ、どっちだろうね?」

    男の言葉が胸に刺さる。でも、弄られているようにも感じた。

    「……」

    その言葉を聞いて、俯いたまま動けなくなった。

    「いいんだよ。それも、君の意思だ」からね 

    男から、冷めた目で見られた。

    (ああ、そんな目で見ないで――)

    心が、苦しくなった。

    「じゃあ、君は此処にいる意味がないね。もう、私と逢う事はしない方がいい」

    男から冷たく突き放された。

     「ごめんなさい・・・・・・」

    謝らずには、いられない。

    「ご主人様・・・・・・リカを・・・・・リカのすべてを見て下さい。リカを好きなようにして下さい」

    平伏すように、男に願い出る。どうして、そんな言葉が出たのか――。

    (今――この人を失いたくない!)

    湧き上がる想い――それは、心から願う事・・・・・・

    「いい子だ」

    男が笑みを零した。

    「・・・・・・」

    男の言葉で、力が抜けた。

    「さあ、こっちにおいで――」

    「はい。ご主人様」

    男に呼ばれるまま、傍まで歩いていく。でも、怖くて顔が上げられない。

    「初めから、素直でいれば良いんだよ」

    男は、そっとわたしの顎を持ち上げる。

    「はい」

    男を見つめ、素直に頷く。もう、完全に……わたしは、彼の奴隷――。

    「お前は、俺の言うことを聞いていれば、いい」

    男の口調が強くなる。

    「はい」

    眼を伏せ、俯いた。もう、拒むことさえできなかった。

    「いい子だ。これから、俺の命令に従うんだ。わかったかい?」

    「はい、ご主人様」

    ――それ以上、言葉にならない。男は、わたしのカラダをやさしく撫でている。

    「いい子だ。リカ・・・・・・」

    髪を撫でながら、おでこにキスをしてきた。

    ――チュ!――

     
    ――続く・・・・・・

    官能小説”マリオネット” 改訂版 3話

     
    第2話から、続き――
     
     
    「何がして欲しいのかな?」
     
    「えっ!」
     男の言葉に驚いた。男の顔を見つめる。変わらない笑顔があった。
    「さっき、眼が合った時――そんな顔をしていたから……」
     男がさらりと言う。
    ……(そうか――)」
     そんな事――思ってもみなかった。彼には、そんな風に見えたんだ。でも、そうなのかもしれない。今の自分が好きじゃなかった。だんだん、朽ちて行くような気がしていた。
    (もう、若くない――)
     このまま何も変わらず、年を重ねていくのかな? それが妙に寂しかった。
    (このままでいいの?)
     ある意味、ジレンマも感じていた。でも、自分じゃどうすることも出来ない。
    (この人なら――)
    何もかも見透かされているこの人なら――そう感じた。偽っても、誤魔化しても無駄――それなら……
     
     
    「何がして欲しいのかな?」
     
     自分でも思いがけない言葉でもあるが、口から出てしまった。 少しばかり大人びた口調だったかもしれない。 それは――今、目の前にいるこのオンナが、酷く小さくいじらしく思えたからだ。しかし、この言葉から――俺自身の葛藤が始まっていたのだ。
     オンナの怯えは理解できた。しかし思った以上に理解というか――受け入れる反応が早かったことには、意外という想いをした。 それは、彼女の中に埋もれていた何かが動き始めた事を意味する。
    その事を後で知ることになるのだが……今は、素直さに驚いている。
     
     
    「私――」
     一瞬、口篭もる。それでも、思いを口にしたい気持ちがあった。
    自分を変えたいんです! このままじゃ、嫌! もっと、輝きたい――」
     思わず、想いを口走る。
    「そう……でも、自分を変えるには君自身で変えなくっちゃ」
     思ったより、冷たい言葉が返ってきた。でも、その方が冷静になれる。この状況に流されているわけじゃない。
    (そうだ。男の言うとおり。わかっていたこと――)
     反対に 自分の気持ちに正直になれた。
    「そうなんです。でも――」
    「迷っているのかい?」
    「そうかもしれません。だから、今を逃したら――」
     悲壮感が漂った。そんなに追い詰められているとは、思っていなかった。
    「そうだね。じゃあ、君は――私に何がして欲しいのかな?」
     男は、にこやかに微笑んだまま尋ねる。
    ……私のすべてを見て下さい。貴方に見て欲しい……」
    (えっ!)
     自分の口から出た言葉に驚いた。
    (何を言っているの? 一体、何を見せるつもりなの?)
     自分で言った言葉が信じられない。でも、心が、勝手に口を開いた――。
    「いいよ。君が望むなら、君のすべてを見てあげよう。でも、私で良いのかい?」
    「はい」
     男の優しい眼差しに見つめられ、素直に頷いた。もう、後悔はない。
    「わかったよ」
     男は微笑を浮かべながら、ゆっくり近付いてくる。
    ――びくん――
     男が、頬に手を添えた。恥ずかしさと恐怖で、顔が上げられない。
    「嬉しいよ。君のような若い可愛い子が、私に全てを見せてくれるなんて――。それで、君は脱がされるの方が好き? それとも、自分で脱ぐ方がいい?」
    「えっ!」
     男の発した言葉に頭がくらくらした。
    (そうか――すべてを見せるという事は、そういう事なんだ)
     男の選択肢の中に”脱がない”という言葉は無かった。
    (この部屋に来た事で、予想はしていた。子どもじゃ無いんだもの。男と女が一つの部屋でする事は決まっている――)
    「私は――」
    気持ちを固めた。
     

    やはりそうだったのか――)
     このオンナは何かに抑圧されているようだ。 もしかして、誰かに拘束でもされているのだろうか? それとも拉致から逃げ出して来て放心状態なのか?しかし、その動きや表情からすると、どうも違うようだ。オンナの身体を見ながら、頭の中では――いったいどんなオンナだと? ――駆けめぐっていた。 そのうち――逃げている(?)なら、誰から? 男か? 警察か? 集金人か? ――様々な思いが駆けめぐる。それは第一には俺自身の安全確保だ! 巻き込まれるのはゴメンだ! そこまでお人好しではない! しかし、ここまで来てこのオンナを危険に晒すのは、男らしくはないと――自分でも少し偽善者気取りになっていた。
    (まあ、それもいいか――もう無くすものもないし、まあ、いいか――。)
     そんな考えを巡らしている間に――違う自分に気がついた。オンナの身体を見ていたことに気付いた。 なんだか不思議な魅力を持ったオンナだ。胸は僅かに薄いが、全体的に纏まっている。無駄のない身体だ。 そう、今はブクブクと豊かな身体が多いが、このオンナはけっしてその部類には属さない。 それよりも、痩せの方に入るのだろう。今は、スカートから出ている脚の部分だけを見ているが――その流れで、奥までも想像している。
    (ふふ~~ん。いい女だ!)
     オンナは気がついているようだ。俺が舐めるように見ていることを――。 少し、後ろめたさを感じた。 でも、ここでそれを出してしまったら、オンナは「羞恥心」を一気に加速してしまう。 俺は出来るだけ平静に装うことにした。 しかし、それはある意味苦痛でもあった。男として、この状況の中、もちろんいろいろな事を想像してしまう。現実にオンナが、しかもこんなにいい女が目の前にいる。 それもベッドに腰掛けている。 自然に――ベッドでのこのオンナの姿態を思い浮かべてしまう。 想像するなという方が無理なことだ。少しばかり薄暗いことが幸いしている。
    そして、オンナがまた、遠くを見ていることが幸いしている。 俺の下半身の部分的変化に気付いていない。 もう既におれの身体の葛藤も始まっている。オンナは気付いていない――
     そのオンナの重い口から――出て来た言葉は……。意外なことであるが、自然とも感じた。

    「自分を変えたい・・・・」
    そうだ! よくあることだ!)
    もっと夢を実現させるために、今の自分を変えてしまいたい――なんて。 でも、このオンナの言葉は何か違うようだ。どうも……このオンナ――。 美し過ぎるが故に、守られ過ぎているのかもしれない――どういう事かって? それは――自分を出し切れていないと言う想いが募っているようだ。ほんとうの自分にはこんな面もある、あんな面もある――なのに、私は……。って、感じかな? 結局、このオンナを拘束していたのは、縛り付けていたのは、このオンナ自身であり、誰かから逃げていたって言うのは、今の自分から逃げているんだろう。たぶん――。 じゃあ、ここは――俺がリードして、このオンナを自分自身から解放してやろう!
     
     
     見知らぬ男に腕を取られて、部屋まで来てしまった私――その男の前で――
    「私……自分で脱ぎます」
     男を見つめて、言い切った。
    (自分から、服を脱いだ事なんか――今までなかった。そう言えば、ずっと脱がされてきた……成り行き?――ううん、違う。自分で決めた――)
     心の中で、自分に納得させていた。
    ――ふぅー――
     大きく息を吐いて、はっきり気持ちを固める。上着を脱いで、スカートのファスナーを
    下ろした。男の視線が、注がれているのがわかる。でも、気にせずスカートも脱いで、パンストも脱ぎ捨てた。とうとう、ブラウスにショーツだけの格好になった。少し、胸がどきどきする。ブラウスの釦に手をかけた――途端、その手が止まった。
     

    あはは――)
    自分でもおかしなくらい素直にこのオンナの力になろうと思っている。 いつものなら、関わりたくないという想いで通り過ぎてしまうのに――。今回は積極的にこのオンナに向かっている。何がそうさせるのか? 身体か? それだけではない。このオンナの持つ――清楚な中にまた違うオンナを垣間見たからかもしれない。 それが何なのかは、まだ解らない。
    (知りたい!)
     まあ、何かしら波長が合うっていう簡単な想いもある。 そこで、俺は極力冷静さを保ち、主導権を握りながら、オンナの自主性と言うか主体性を引きずり出そうと考えていた。だから、あえて静かに言った――

    「どうかしたの? 嫌なら、いいんだよ」
     
     ――続く
    August 08

    官能小説”マリオネット” 改訂版 2話

     

    第1話より、続き――

     

    「行こうか……」
     
    (えっ!)
      いきなり声をかけられ、驚いた。それも、見知らぬ男に――。
     男は私の腕を取り、ホテルのラウンジを出る。自然と足が従っている。
    「どこへ?」
     小さな声で訊いた。そう言うのが、精一杯だった。その人は、にこやかに微笑むだけで何も答えない。腕を取られたまま、ホテルのエレバーターに乗り込む。上へと上がっていった。次第に鼓動が速まっていく。
    (どうして――)
     見ず知らずの男の人に誘われるまま――。
    (そんなに軽い女じゃないのに――)
     でも、逃げ出す事も出来なかった。眼が合った瞬間、こうなる事を予感はしていた。
    ――チン!――
     エレベーターが止まった。胸の高鳴りが、最高潮に達する。
    「どうぞ! 私の部屋だから、遠慮はいらないよ」
     促されるまま、部屋の中に入る。男は上着を脱いで、椅子に腰掛けた。
    「部屋が狭くてすまないね。君のような人に逢えるなら、ツインを取っておくべきだったかな?」
     男は、笑みを零す。その柔らかな微笑が、一瞬――緊張を解す。でも――すぐに俯いた。
    「あのー」
     顔を上げられずに声を出す。心臓が、喉から出そうだった。
    「何も気にすることはないよ。そこのベッドに座ったら? ゆっくりできる」
     立ち尽くす私に向かって、男はベッドを指差した。
    「……」
     言われるまま、腰を下ろす。ベッドは、思ったより柔らかだった。
    (何か、されるの?)
     少し心配になったが、男は何も言わずに見つめているだけ――。沈黙の時間が過ぎた。
    「私――」
     静寂を破り、声を出した。この部屋の空気と静かに流れる時間に耐えられなくなったから――。
    「何か、飲むかい?」
     男は立ち上がって、部屋の冷蔵庫を開ける。手馴れた手つきで、水割りを作ってくれた。
    「さあ、どうぞ! 少し、落ち着くよ」
    「あ、ありがとう」
     唾が乾いて、唇が上手く動かない。渡された水割りを口に含む。
    ――ゴクリ――
    (あー、美味しい)
     思っていたより、喉に渇きを覚えていた。水割りと一緒に男の優しさを飲んだような気がした。ほっと、一息つけた。
    「私――」
      目の前にいる男を見つめ、声を発した。それ以上は、言葉が続かない。
     
     
    「行こうか……」
     
     俺にまったく躊躇いがなかったわけではない。これが、普通のおんななら――このオンナ以外のオンナなら――躊躇と勇気と後悔が混在していたことだろう。 不思議なことに――このオンナに対しては、自然と言葉になった。もちろん、このオンナは戸惑うに違いない。 しかし、俺についてくるものだと思っているのだから不思議である。 もう何年も前から、こうしているように――たぶん、僅かな驚きを見せたはずではあるが――敢えて、俺はオンナを見ないようにした。 その方が、周囲に対しても自然だからである。その時、僅かであるが――胸の鼓動が加速した。 瞬時の内にオンナの腕を取り、引き寄せる。
    (なんて、細いんだ!)
     
    か細い身体に愛おしさが増した。 オンナはすんなりと引き寄せられた。 俺は、気持ちが伝わったと感じていた――が、しかし……
    俺は、このオンナをいったいどうしようとしているんだろう?)
     
    もの凄い早さで、今からすべき事が頭の中を駆けめぐった。
    (そうだ! 俺の
    部屋に連れて行こう……)
     
    オンナは日本人に違いない。 男が居るんだろうか? それは夫と呼ばれる存在なのか? それとも――ヒモと呼ばれる存在なのか? オンナは、何処までついてくるのだろうか? 俺の男の部分も刺激されつつあるのは事実だ。 でも――それは抑えることにしよう。
     
    そこまで考えていたら――エレベーターのドアの前に立っていた。 幸いエレベーターは直ぐにやって来た。 俺は、オンナの決心を守ってやろうと、腕を離さなかった。その行為が、オンナの安堵を誘ったのかもしれない。 オンナの呼吸は驚くほど静かだった。 恐らく――なるようになれ!と肝が据わったのかもしれない。 それに引き替え、俺の鼓動は強くなった。オンナの腕に、少し力が入ったかもしれない。 慌てて、平静を装うことにした。
    場所は、ここしかない――)
     
    そう――俺のとったホテルの部屋だ。 久しくひとりでいるのでいつもこの大きさの部屋なのだが、今ばかりはもう少し大きな部屋にしておけば……と虚勢を張りたい気分の自分に対して、苦笑いを送った。だからオンナには正直に伝えた。部屋の小ささを――。その方が、気が楽になる。オンナにもその方が良かったようだ。 俺が計画的な行動をとった男ではない――ということを理解してくれたようだ。
    少しだけ、距離が縮まったかな?)
     
    俺は、このオンナに興味を抱いている。 不思議な魅力が俺を襲ってくる。 気持ちの高揚を見破られてはいけないので、出来るだけ平静を続ける。
    (あれ?)
     その時、俺は自分の声に異変があることに気付いた。喉がカラカラになっている。オンナに飲み物を勧めよう。 お互いにリラックスが必要だ。 何故、喉が渇くかって?―― それは……このオンナが、いいオンナだからだろう。卑猥ないい方だが、そそられるオンナだ。しかし、決して嫌らしい下品な要素ではない。 なんとも――自然に、身体の中から滲み出てくる色気のようなものを感じ始めていた。 それは、慣れたオンナの色気ではない。かえって、自分の熟れた身体に気付いていない 。ある種の位相差を感じるというか――アンバランスな色気を醸し出している。 俺は、自分自身が男として惹かれているのに気付いている。しかし、表には出さないでおく。
     そこで、水割りをオンナに勧めた。俺も柔らかな味が喉を潤すことで、少し落ち着きを取り戻すことが出来た。 さて、オンナを気楽にさせてやろう。 でも……そう――あまり回りくどいことを言えば、かえって怯えさせる。ここは、ひとつ賭けに出てみるか? 気持ちが翻ったなら――それなら、それでいい。 俺は、率直に伝えることにした。 ストレート過ぎるかもと思った瞬間――もう出てしまっていた。

    「何がして欲しいのかな?」
     
    August 07

    官能小説”マリオネット”改訂版 1話

     

    「行こうか……」
     いきなり腕を摑まれ、ホテルのラウンジを出た。
     そう――さっきまで、私はホテルのラウンジにいた。何故?――。別にお酒を飲みたかったわけじゃない。一人でいるのが嫌だったから――。ただなんとなく……このホテルに足が向いた。此処は、遠距離恋愛中の彼が所要でこっちに来た時、よく利用していた。そう――私は、彼に逢いたかった。無償に逢いたかった。でも、仕事が忙しい彼に甘えることも、無理を言うことも出来ない。三十前の女が、そんな姿を見せられない。格好が悪いと思った。縋っているようで――。もう、素直になれない。若くないから……。惨めさが心を覆う――
     見渡すと、此処にいる客はみな誰かと一緒だった。心地良いメロディーの流れる中、人々は会話をしながら、グラスを傾けている。
    (ひとりでいるのは、私だけ――)
     そう思うと、寂しさが増した。
    (えっ!)
     その中で、眼が合ったひとがいた。ずっと、こちらを見ていたのか――その人の残像だけが目に焼きついた。
    (……)
     にこやかに微笑むその人から、眼が離せなくなった。スーツを着たサラリーマン風のひと――中肉中背のただのおじさん――ハンサムでもなく、目立つ風情でもなかった。反対にこの華やかな場には、似合わない。ちょっと、草臥れた感じもする。でも、何故か惹き付けられた。
    (どうして……)
     急に胸がドキドキしてきた。心の中を見透かされているような気分になる。恥ずかしくなって目線を逸らし、俯いた。でも、その場から動けない。身体が椅子に張り付いている。
    (……待っている? 馬鹿な――そんなこと……)
     期待と不安が交錯する中、足音が近づいて来る気がした。人の気配をすぐ側に感じた。
    「あっ!」
     顔を上げた私の目に映ったのは――
     
     
     俺は――。胸が締め付けられるような想いをした。かなり昔に経験した痛みだ。しかし、その痛みが――すぐにそれであるとは気付かなかった。それもその筈、もう何十年もこの痛みを忘れていたからだ。
     そのオンナは、遠くを見つめていた。特に何かを見ているというのではなく――言うならば、遠い過去からの自分を見つめているようだった。何故、そのオンナに気付いたのだろう? その時――俺は、まるで時間が止まったようだった。廻りは何も見えなくなっていた。あんなにたくさんの人間がいる空間なのに――。ホテルのラウンジの空間だけが見えている。まるで、いつも見ている図面の中を見ているようだった。モノトーンの世界のラウンジにそのオンナだけは色づけされていた。そう――そのオンナしか見えていない。見ていなかったのだろう。何故か――オンナの横には、カップルもいる。また、難しそうな商談をしているビジネスマンもいる。それに――意味ありげな人妻だろうか(?)オンナもいる。――なのに俺は、そのオンナしか見えていない。
    (やはり、変だ――)
     胸の痛みと鼓動が――オンナを見てから始まった。
    (この痛みは――一体、何なんだ?)
     オンナが目線を落として、こちらを向いた。流れるように――。視線がこちらに送られてきた。その時、既に俺の行動は決まっていたようだ。極々自然に、何も考えることなく――視線を――女の視線を吸い取るように受け入れていた。そして――。そのオンナに近づいていた。
    (確かに……いい女だ)
     オンナの視線から来る、物憂げな感じ――その表情のなかに寂しさと惑いを感じたのは直ぐのことである。オンナは何かを探している。探しているというより、求めているようだ。何か――解らない。でも、何かを求めている。もしかしたら――もしかしたら、あの時の俺と――そう思うと、このオンナがいじらしく思えてきた。本の数秒の事なのに――
    (この変化はいったい何なんだ!)
     見つめていたオンナの視線を受けて、視線を返した。
    (ついておいで――)
     そう、オンナは気付いているはずだ。きっと――。俺は、オンナに近づいていった。そして、ほんとうに自然に言葉が出た。
     
     「行こうか……」
     
    ――つづく――
    August 06

    官能小説”二つの仮面を持つ女” 1話

     
    「さあ、こっちにおいで!」
    「はい、ご主人様……」
    男の言葉に素直に従った。――いいえ、拒めないの。
    私はこの男の前では、抵抗できない。何故か――
     
    私――上月里香36歳。1男1女の母親で、列記とした人妻。
    ――なのに、1ヶ月前――
    この男と出会ってしまった。
    同窓会の帰り、友人たちと飲みなおしに立ち寄ったホテルのバーで、偶然出会ったこの男と意気投合した。
    「このまま、抜け出さないか?」
    男に声をかけられ、友達と別れて、この男の馴染みの店に――
    彼との会話は、私の興味を抱かせた。
    彼の知識からくるものだった。それだけじゃない。言葉に妙な説得力がある。私の心は、男の言葉に惹き付けられた。
    彼には、奥さんも子供もいるからと、妙な安心感も抱いていた。
    それから、誘われるまま――度々会うことになった。
    数回目に逢った時、
    「私の家は、すぐそこなんだ。ちょっと、寄っても良いかな?」
    「ええ、構いませんけど――」
    「悪いね。この後逢う人に渡さなきゃならない書類を忘れてしまって――」
    「・・・・・・ええ」
    そのまま、男の家に向かう。連れて行かれたのは、マンション。
    「せっかくだから、ちょっと上がって待ってて――」
    「でも――」
    「冷たいものでも、飲んでよ」
    「あ、はい」
    男に促され、家の中に入る――それが、間違いだった。
    「あれ? 奥様は?」
    通されたマンションの一室――あまりにも、殺風景な部屋に驚いた。家の中は、きちんと整理されていたが、女の気配がない。
    「言ってなかったかな?ここは、家といっても、私の仕事場だよ。最近では、月の半分は此処にいる」
    「えっ!」
    (じゃあ、此処にはひとりで――)
    背後に立っていた男の手が、私の肩を強く掴んだ。
    「離して下さい!」
    男の手を振り解く。
    「君は素直じゃないね。自分では、気付いていないんだね。君の中のもうひとりの存在に――」
    「えっ!」
    「私が、君の未知なる部分を開花させてあげよう」
    「何をおっしゃているんですか?」
    男の話す言葉の意味がわからない。
    「今日から、私が君のご主人様だ!」
    「・・・・・・」
    私は、言葉を失った。
     
    つづく
    July 31

    官能小説”マリオネット”完結編

    ――第二話から、続き――
     
    ――どき、どき、どき――
    見ず知らずの男の視線を感じながら目を閉じ、ベッドの上でじっとしている私・・・・・・それも全裸で・・・・・・。そう――ゴヤの”裸のマヤ”を思い出した。頭の上で腕を組んでみる。その方が落ち着いた。
    (何故、此処にいるんだろう? これから、どうなるのかな? わたし――)
    頭の中を掠める想い――それでも、此処から動く気になれない。
    「綺麗だね」
     男の声が響いた。
    「えっ!」
     驚いて目を開けた。にこやかに微笑む男の顔を見て、急に頭に血が上る。
    「本当だよ。こんなおじさんが、君の裸を見てしまって良かったのかな?」
    「・・・・・・」
    「どうかした?」
    「いいえ・・・・・・」
     急に恥ずかしさを感じた。手で顔を覆う。
    「恥ずかしい?」
    「はい……見られているのも恥ずかしいけど、綺麗って言われるような身体はしていないし――どうしたら良いのか?」
     困惑した。どうしたら良いのか、本当にわからなかった。でも、隠すところが違っているような気もしたけど――もっと見て欲しいという欲望が、私の中に生まれていた。
    「恥ずかしがらないで、とっても綺麗なんだから――」
    「そんな……だって、胸は無いし――」
    軽く胸に触れてみる。小さな手に収まるほどのふくらみ――
    「胸の大きさなんて、気にすることじゃない。それは、個人の好みだから――。はっきり言って、私は大きいのは好きじゃない。君の胸がとても素敵に見えるよ」
    「本当に?」
    男の言葉に覆っていた手を外し、顔を上げた。
    「ああ」
    返事する男の顔が妙に照れていることに気づいた。
    「あのうー、良かったらもう少し詳しく教えて頂けませんか?」
    私は、男の顔をみて言った。意外にも大胆な発言をする。こんなにも度胸があったのかと思う。
    「いいが――」
    「?」
    「ああ……私の感想を述べよう」
    「はい! お願いします」
    ベッドの横たわりながら、男に頼む。
    ――ふぅー――
    男が大きく息を吐いた。
    (何を言われるんだろう――)
    男の言葉を静かに待った。
    「……」
    しかし、何も聞こえてこない。
    「?」
    「……」
    いくら待っても、やっぱり何も聞こえてこない。
    「あのうー」
     男の言葉が待っていられなくて、声をかける。
    「すまない……言葉が思い浮かばないんだ。あまりにも綺麗で――」
    「えっ!」
     男の言葉に驚いた。
    「本当に私が見て良かったのだろうか――」
    男が後悔している様子がわかった。
    「意味がわからないんですけど――」
    本当にわからなかった。こんな貧弱な身体を見せてしまって、後悔するのは私のほうだ。なのに――男が後悔している。何故?――
    「ごめんなさい!」
    私は、男に悪いことをしたと思った。素直な気持ちで、抱きついた。
    「……」
    男は面食らっているようだった。
    「ごめんなさい。私が無理言ったから――。あなたを苦しませるつもりは無かったの」
    「……違う。そうじゃないんだ」
    男がぼそりと呟いた。
    「……?」
    私は、その時気付いてなかった。男の本当の気持ちを――。
    「……このままだと、私は君を抱いてしまう……」
    男が意外な言葉を口にする。苦渋の表情を浮かべている。
    「えっ!」
    男の態度の急変に驚いた。
    「――それは、駄目だ!」
    男が、抱きついていた私の手を掴んで、外す。そのまま、肩を押した。
    「私は、汚れているんだ。君のような子を抱く資格が無い」
    男は項垂れたまま、言葉を続けた。
    「そんな……貴方は、汚れてなんかいません。私に、素敵な言葉を下さいました。勇気も――」
    「それは違うよ。君は最初から勇気をもっていた。見ず知らずの私の前に、君はその汚れない身体を披露してくれた。私はただ素直な感想を述べたに過ぎない」
    「……」
    「もう、いいんだ。服を着なさい」
    男は、くるりと背を向けた。その後姿を見たとき、私の中に生まれた不順な思いに気付いた。
    「ごめんなさい」
    思わず、出た言葉。
    「君が謝る事は無いだろう」
    「いいえ、私――横たわりながら、ある妄想を抱いていたんです」
    「えっ!」
    男が振り返った。その顔から驚きが生まれていた。
    「座って話そう」
    立ち尽くす私に男は、上着をかけ、そっと肩を抱いて、ベッドに座るように促した。
    「何か、飲むかい?」
    立ち上がった男は、優しく言葉をかけてきた。
    「はい、頂きます」
    私は、男の優しさに甘えた。男は、さっきのように水割りを作ってくれた。
    「アルコール以外の方が良かったかな?」
    軽く笑みを零す。その微笑に救われる。
    「いいえ、今はこの方がいいです」
    渡されたグラスに口をつけた。ほっと一息つける。
    「そう……なら、良かった」
    反対に、男は手にした水割りを一気に飲み干した。
    「私……貴方に見られて、背中を触られて――。今度は、前も同じようにされるんだろうなって思ったんです。それで、自分ではすべてを見せたつもりでいたんですけど――」
    話しながら、思わず口篭もる。
    「うん」
    男は、優しく微笑んでくれた。
    「君はまだ見せてないところがあるって――」
    「見せてないところ?」
    「……アソコ……」
    私は、小さな声で呟いた。言葉にして、赤面する。
    「……」
    男は、その言葉を予期していなかったのか――面食らっている。
    「ごめんなさい。貴方に見られて、舐められることを想像してしまって――」
    私は、頭を下げた。嫌な思いをさせたと思った。
    「いや、いいんだ」
    男も何かを感じていたようだ。
    「私、付き合っている彼がいるんですけど、遠距離で――。最近はなかなか会えなくて――。彼は、結婚しようって言ってくれているんです。私もそうなるとは思っているんですけど、このまま流されるように結婚するのかなって。Hだって、倦怠期じゃないんですけど、楽しくなくて――。彼、入れて出す感じで、私に魅力ないのかな?って。このままじゃ、だんだん朽ちていくような気がして――。彼のこと好きなんですよ。でも――なんか――」
    私は、思っていたことを口にした。でも、上手く説明できない。
    「最初にも言っただろう。君は、十分魅力的だよ。だから、部屋に連れて来てしまった。君に対して、私は――」
    男は、苦しそうな顔をしている。
    「君を見て、触れ、男の欲望を沸き立てていたんだから――」
    「……」
    意外だった。男は、そんな態度を示さなかった。いや、私が気付こうとしなかっただけかもしれない。男は、ずっと気持ちを抑えていた。いつでも、襲うと思えば襲えたのに――。私の心の中には、不安が渦巻いていた。ある意味、そうなる事を期待していた危惧さえある。
    「帰りなさい」
    「えっ!」
    男の言葉に驚いた。
    「君は何も無かったように、此処から出るんだ。そのほうが良い」
    「でも――」
    「君は、もう大丈夫だよ。一時、私の操り人形になりかけたが、君には強い気持ちがある。だから、もう私がこれ以上力を貸す必要は無い。さあ――」
    男は急き立てる。
    「でも――」
     そんな強い気持ちを持ち合わせているようには思えなかった。まだ、何も変わっていない。
    「いいかい? わかっていると思うが、私たちはもう知らないもの同士。多分、逢うことは無い。もし逢うことがあったら、そのときは『初めまして』だよ。わかったかい?」
    「……」
    言葉にならなかった。瞳が潤んでくる。
    「楽しかったよ。いや、嬉しかったというべきなんだろうか――。君のような若い子の綺麗な身体を見せてもらえたんだから――」
    男は、憂いを満ちた表情を浮かべた。
    「……貴方のこと……」
    「私のことは、いい。いいんだ。気にすることは無い」
    「さあ、早く服を着て行きなさい。私の気が変わらないうちに――」
    男に背中を押された。
    「ごめんなさい」
    私は急いで服を着て、部屋を出た。
    ――ふぅー――
    背中で、男の吐いた溜息を聞いたような気がした。部屋を出た途端、涙が溢れてきた。何故か――。
     
     
    「今度、こちらの担当をさせて頂くことになりました米倉敦子です」
    「初めまして、営業の麻生です」
    「宜しくお願いします」
    私は、男と挨拶を交わした。
     
     
     
     
    いかがでしたか?
    官能小説を書くつもりが――ちょっと違ったかも?
    1話目と2話目も、手を加えました。
    また、後日掲載します。
     
     それから、女がうつ伏せた様子は、たぶんこんな感じ。
    例の一日onnlyの写真を載せます
    July 23

    官能小説”マリオネット”2話

    第一話から続き・・・
     
    此処は、ホテルの一室――
    見知らぬ男に腕を取られて、部屋まで来てしまった私――その男の前で――
     「私……自分で脱ぎます」
     男を見つめて、言い切った。
    (自分から、服を脱いだ事なんか――今までなかった。そう言えば、ずっと脱がされてきた・・・・・・成り行き?――ううん、違う。自分で決めた)
    ――ふぅー――
     はっきり気持ちを固める。上着を脱いで、スカートのファスナーを下ろす。男の目が、注がれているのがわかった。でも、気にせず、スカートも脱いで、パンストも脱ぐ。ブラウスにショーツだけの格好になった。少し、胸がどきどきする。ブラウスの釦に手をかけた――途端、その手が止まる。
    「どうかしたの? 嫌なら、いいんだよ」
     男が優しく声をかけてきた。
    「ううん……嫌じゃ、無いけど――」
    「けど――何?」
     男が詰め寄ってくる。
    「恥ずかしいの。だって、知らない人の前で、服を脱ぐなんて――」
     言い訳をした。
    「やっぱり、嫌かい?」
    「ううん、そうじゃないの」
    「なに?」
    「変なんです。見られてる事に妙な興奮を覚え、心地良さを感じている自分がいるんです――けど、人に見せられるほどの身体はしていないし――」
     言葉を発して、俯く。まだ、多少の迷いがあった。
    「それは、君が思っているだけじゃ無いのかな? 私は、そうは思わないが――」
    「えっ!」
    「君は、自分の魅力に気がついていないだけかもしれないよ」
     男がにこやかに微笑む。
    「魅力? 私に魅力があるんですか?」
    「あるよ。だから、私は君を見ていた」
    「えっ!」
     驚いて、男の顔を見る。変わらない笑みを浮かべていた。その微笑に救われる。
    「嘘じゃない。だから、眼が合っただろう?」
    「……そ、それは――」
     確かに、そうだった。目が合った。ドキッとした。
    「それだけじゃ無い」
    「えっ!」
    「君は、探していた……」
    「……(私……男を探していたの?)」
     余りの事に言葉にならない。 男の言葉に目を丸くする。
    「くっ、くっ、くっ」
     男は、いきなり口を押さえて笑った。
    「・・・・・・」
    「ごめんよ。君の驚きが可笑しく思えたんだ」
    「……?」 
     男の言葉の意味がわからない。呆然となった。
    「いやあ――別に、君が男を捜していたと言っている訳じゃ無い。自分を解放してくれる――そう、何か・・・・・・切っ掛けを作ってくれる人を探していたんじゃないか? たまたま、それが私だった・・・・・・」
    「そんなことは――」
    「ないとは言わせないよ」
     男が言い切る。はっきりと――
    「・・・・・・」
     心の中を見透かされている。
    「だから、私は君の力になってあげるよ。いや、君の力になりたい。でも、私は君に対して自分の意志を示さないよ。だから、安心するんだ。今から、私は君のマリオネットになろう。君の意志に従う――ただのマリオネットになるよ。君は、君のしたいようにすればいい。脱ぐのが嫌なら、止めればいい。それは、全て君の意思次第だよ」
     男の言葉で、反対に背中を 押された気がした。
    「私、脱ぎます。このままじゃ、駄目――そんな気がするから・・・・・・」
     男の言葉に、はっきり意思を示した。
    「そう――君の思うとおりにすれば、いい。私が見届けてあげよう。いいね?」
    「はい! お願いします」
     見知らぬ男に対し、強く意思を伝えた。そう――いつも、何か流されていた。今も。流されているのかもしれない。でも、何かが違う。そんな気がした。後戻りも出来ないような――。過去を脱ぎ捨てるように、ブラウスを脱いだ。ブラも外す。ショーツも脱いだ。生まれたままの姿を見知らぬ男の前に曝け出す。でも、恥ずかしくて――手で隠す。顔も上げられない。
    「綺麗だよ・・・・・・」
    「えっ!」
     男の言葉に耳を疑った。
    「本当に綺麗だよ」
    「嘘!」
    「嘘じゃない。君は、自分を知らな過ぎる」
    「自分を知らない?」
    「そうだよ。そんなに恥ずかしがらずに、胸を張ってごらん?」
    「でも・・・・・・」
    「恥ずかしい?」
    「・・・・・・うん」
    「私は、君のすべてを見たいよ」
     男が思わず、言葉を口にする。
    「えっ!」
    「あっ! ごめん。私の意思は示さない約束だったね」
    「いいえ、いいんです。今は、あなたの意見が聞きたい。お願い・・・・・・」
     思わず、男に懇願した。
    「えっ!」
    「私を見て、素直な感想を教えて欲しいの。自分じゃ、、わからないから――」
    「・・・・・・わかったよ」
     男は椅子から立ち上がり、側に近づいて来た。
    「恥ずかしい?」
    「はい」
    「じゃあ、うつぶせになるといい。少しは恥ずかしさが緩和されるかもしれない」
    「そうですね」
     男の言葉に促され、うつぶせになった。
    ――ふぅー――
    言われた通り、気持ちが楽になった。
    視界に何もない。
    「・・・綺麗だ・・・」
    「えっ!」
     ほっとした耳に男の呟く声が聞こえた。
    (そうだ。彼がいたんだ・・・)
     そのことを思い出した。途端、体が熱くなる。
    「えっ! 今、なんて言ったの?」
     恥ずかしさで、彼の言葉を聞き逃していた。
    「綺麗だって言ったんだよ」
    「えっ!」
    「驚くことはないだろう? 素直な感想を述べただけなんだから・・・・・」
    「綺麗って・・・」
    「そうだよ。背中から、お尻のラインが綺麗だよ。それに、可愛いお尻も美しい。盛り上がった山の 形も良い。私好みと言った方が良いかもしれないね。思わず、触れてみたくなる。いいや、このまま眺めていたいね」
    「そんな・・・・・・」
    「何?」
    「そんなこと・・・・・・」
    「自分で見たことがないんだから、仕方がないか――。信じられないかもしれないね」
    「はい」
     自分のお尻なんて見たことがない。まあ、胸がない分、少しはマシかも知れないとは思っていた程度。綺麗と言われて反対に驚いた。
    「それでは、私なりの感想を言おうか?」
    「はい、お願いします」
     男の熱い視線を浴び、少し身体が萎縮する。でも、聞きたかった。
    「そうだね。丸い小高い二つの山の綺麗な丸みとその形の美しさに惚れ惚れするよ。若いから張りもある。太股まで流れる線も美しいね。太股から・・・・・・その丸みに沿って、そっと撫でて見たくなるよ。それに、腰のくびれと太股の柔らかさのコントラストもいい。その二つの山の谷になる部分までもが、美しい綺麗な陰を残しているよ。僅かに開いた腿の間から現れる黒い影が――なんとも美しい。そっと、押し広げて、丸いお尻から裾野に落ちる滝壺の様な君の花びらを見てみたい。きっと、一輪の薔薇の様だろうね。その薔薇をこの美しいお尻と一緒に眺めていたいよ。こんなにも美しい身体は芸術品だ!」
    「・・・・・・」
     男の言葉に、何も言えなくなった。恥ずかしさが悦びに変わる。こんなにも、言葉で賞賛されたことはなかった。それが、嬉しかった。女として生まれた喜びを感じた。
    「本当に、そう思うの?」
    「ああ、そうだよ。そっと、撫でていたい気分だ」
     男がにこやかに微笑んだ。
    「いいですよ」
    「えっ!」
    「撫でるだけなら、構いません。こんなにも誉めてもらって嬉しいから。あなたにも感じて欲しい」
     言葉の賞賛を浴び、嬉しさのあまり男が触れることを許した。
    「いいのかい?」
    「はい」
    「じゃあ、触るよ」
     男が嬉しそうに手を伸ばす。
    「はい」
    ――びくん!――
     男の手が背中に触れた。そのまま、お尻から、太腿、脹脛へと下りていく。そして、爪先まで行って、反対側の足から上へと上がっていく。
    (気持ちいい・・・・・・)
     男の撫でる行為に、ただ身を任せた。心が落ち着いていく。
    男は、それ以上の事はしなかった。ただ、背中を順序良く撫でていく。その行為を繰り返すだけ――。静かな時間が過ぎていく。
    「あのう――」
     男に声をかけた。
    「何かね?」
    「・・・・・・前も、見て頂けますか?」
     撫でる行為にただ身を任せているこの時間――心地良かったけど、それだけじゃ前に進めないような気がした。
    「いいのかい?」
    「はい」
    「じゃあ、仰向けに――なりなさい。あっ!私の意思は示してはいけなかったね」
    「いいえ、もういいんです。気になさらないで――」
    「ありがとう」
     男が笑みを浮かべた。それをい届けてから、仰向けになった。
    (彼は、今度はどんな言葉を私に浴びせてくれるのかな?)
     そう思いながら目を閉じ、じっとした。男の熱い視線を浴びながら――
     
     
    ――続く
     


     
    July 17

    官能小説”マリオネット”1話

    ちょっと、楽しい事を思いつきました。
    お話です。
    官能小説とまでは行かないかもしれませんが――読んでみて下さい。
     
    官能小説”マリオネット”
     
    「行こうか・・・・・・」
     いきなり腕を摑まれ、ホテルのラウンジを出た。
    そう――私は、ホテルのラウンジにいた。何故――。別にお酒を飲みたかったわけじゃない。一人でいるのが嫌だったから――。見渡すと、此処にいる客はみな誰かと一緒だった。心地良いメロディーの流れる中、人々は会話をしながら、グラスを傾けている。
    (ひとりでいるのは、私だけ――)
     そう思うと、妙に寂しさが増した。
    「えっ!」
     その中で、眼が合ったひとがいた。にこやかに微笑むその人から、眼が離せなくなった。スーツを着たサラリーマン風のひと――中肉中背のただのおじさん――ハンサムでもなく、目立つ風情でもなかった。でも、惹き付けられる。
    (どうして……)
     急に胸がドキドキしてきた。心の中を見透かされている気分になる。恥ずかしくなって、目線を逸らし、俯いた。
    「行こうか……」
    「えっ!」
     男は私の腕を取り、ホテルのラウンジを出る。
    「どこへ?」
     小さな声で訊いた。その人は、にこやかに微笑むだけで何も答えない。腕を取られたまま、ホテルのエレバーターに乗り込んだ。上へ上がっていく。
    (どうして――)
     見ず知らずの男の人に誘われるまま――。
    (そんなに軽い女じゃないのに――)
     でも、逃げ出す事も、出来なかった。眼が合った瞬間、こうなる事は予感はしていた。
    ――チン!――
     エレベーターが止まった。心臓の高鳴りが、最高潮に達する。
    「どうぞ! 私の部屋だから、遠慮はいらないよ」
     促されるまま、部屋の中に入る。男は上着を脱いで、椅子に腰掛けた。
    「部屋が狭くてすまないね。君のような人に逢えるなら、ツインを取っておくべきだったかな?」
     男は、笑みを零す。
    「あのー」
    「何も気にすることはないよ。そこのベッドに座ったら? ゆっくりできる」
     立ち尽くす私に向かって、男はベッドを指差した。言われるまま、腰を下ろす。男は、何も言わずに私を見つめている。沈黙の時間が過ぎた。
    「私――」
     静寂を破り、声を出した。この部屋の空気と静かに流れる時間に耐えられなくなったから――。
    「何か、飲むかい?」
     男は立ち上がって、部屋の冷蔵庫を開ける。手馴れた手つきで、水割りを作っってくれた。
    「さあ、どうぞ! 少し、落ち着くよ」
    「あー、ありがとう」
     渡された水割りを口に含む。
    ――ゴクリ――
    (あー)
     思っていたより、喉に渇きを覚えていた。ほっと、一息つけた。
    「私――」
     目の前にいる男を見つめ、声を発した。それ以上は、言葉が続かない。
    「何がして欲しいのかな?」
    「えっ!」
    「さっき、眼が合った時――そんな顔をしていたから……」
    「……」
     そんな事――思ってもみなかった。彼には、そんな風に見えたんだ。でも、そうなのかもしれない。今の自分が好きじゃなかった。だんだん、沈んで行くような気がしていた。
    「私――今の自分を変えたいんです! このままじゃ、嫌! もっと、輝きたい――」
     思わず、口走る。
    「そう……でも、自分を変えるには君自身で変えなくっちゃ」
    「そうなんです。でも――」
    「迷っているのかい?」
    「そうかもしれません。でも、今を逃したら――」
    「そうだね。じゃあ、君は――私に何がして欲しいのかな?」
     男は、にこやかに微笑んだまま尋ねる。
    「……私のすべてを見て下さい。貴方に見て欲しい……」
    (えっ!)
     自分の口から出た言葉に驚いた。
    (何を言っているの?)
     自分で言った言葉が信じられない。
    「いいよ。君が望むなら、君のすべてを見てあげよう。でも、私で良いのかい?」
    「はい」
     男の優しい眼差しに見つめられ、私は素直に頷いた。
    「わかったよ」
     男は微笑を浮かべながら、ゆっくり近付いてくる。私の頬に手を添えた。
    ――びくん――
     恥ずかしさと恐怖で、顔が上げられない。
    「嬉しいよ。君のような若い可愛い子が、私に全てを見せてくれるなんて――。それで、君は脱がされるの方が好き? それとも、自分で脱ぐ方がいい?」
    「えっ!」
     男の発した言葉に頭がくらくらした。
    (そうか――すべてを見せるという事は、そういう事なんだ)
     男の選択肢の中に”脱がない”という言葉は無かった。
    (この部屋に来た事で、予想はしていた。子どもじゃ無いんだもの。男と女が一つの部屋でする事は決まっている――)
    「私は――」
     気持ちを固めた。
     
    ――――続く
      
     創作して見ました。どうかな?